厳しい局面は幾度も

また、前経営陣から発表があったような、我々の大事なビジネスパートナーとの関係が危ぶまれているという事実はなく、そして、バイオロジー部門の責任者が辞任するという事実もありません。ビジネスパートナーの皆様、アキュセラのキーパーソンとの関係は以前と変わりなく良好に続いています。

13年前に自宅の地下室でアキュセラを設立し、CEOであり会長として、会社の新薬開発を臨床段階へと導いてきました。そして去年の2月に東証マザーズへの上場を果たしました。私はアキュセラの事業に人生をかけてきました。そのアキュセラに、再び舵を取る立場で戻ることができたこと、これ以上の喜びはありません。この先もアキュセラの「世界を失明から救う」というビジョンとそれを遂行する私のコミットメントは変わりません。

言うまでもなく、この数カ月は苦痛にほかなりませんでした。大株主だからといって必ず株主提案を通せるとは限らないのが現実です。株主という立場でアキュセラと向き合うことも、たやすいことではありませんでした。幾度となく厳しい局面もありましたが、最終的に打開することができたのは、数多くの仲間のサポートのおかげです。応援してくださっていた皆様に心からの感謝を申し上げます。

私の復帰を温かく迎えてくれたスタッフたちにも感謝しています。今回新たに入ってもらった3人の経営陣である最高財務責任者のJohn Gebhart、最高執行責任者のSteve Tarr、最高事業責任者のTed Danseは経験豊かで、この数カ月間、共に速やかに新体制に切り替えるための準備をしてきたメンバーです。彼らとともに新薬開発に全力で取り組んで参ります。

再スタートのチャンスに感謝し、また、今回の教訓を心に受け止め、不屈の精神で新薬開発に邁進してまいります。

窪田 良(くぼた・りょう)●1966年生まれ。アキュセラ創業者であり、会長・社長兼CEO。医師・医学博士。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学院に進学。緑内障の原因遺伝子「ミオシリン」を発見する。その後、臨床医として虎の門病院や慶應病院に勤務ののち、2000年より米国ワシントン大学眼科シニアフェローおよび助教授として勤務。02年にシアトルの自宅地下室にてアキュセラを創業。現在は、慶應義塾大学医学部客員教授や全米アジア研究所 (The National Bureau of Asian Research) の理事、G1ベンチャーのアドバイザリー・ボードなども兼務する。著書として『極めるひとほどあきっぽい』がある。 >>アキュセラ・インク http://acucela.jp
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