財産で揉めるのは金持ちだけ、そう思っていないだろうか? 司法統計を見ても、相続トラブル数は年々増える一方。決して、他人事と思ってはいけない。
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故人が残した不動産の所有権を巡るトラブルも後を絶たない。城南中央法律事務所所長で弁護士の野澤隆氏によると、日本では子どもの人数で田畑を分け、孫や曾孫の代に受け継がれていくうちに、おのおのの田んぼの面積が狭くなり、その結果、生産性が悪化して家が衰退するケースが多く見られたという。愚か者を「たわけ(戯け)者」と呼ぶことがあるが、その語源も「田分け」が由来との俗説もあるそうだ。次に紹介するケースも、まさに“たわけ者”が引き起こした揉め事だといえる。
金沢幸子さん(仮名・83歳)は亡くなったご主人が残した不動産を巡る複雑な相続問題に直面した。
「私に子どもがいれば、子どもと私で資産を折半すれば済んだ話。ところが、あいにくウチの一人息子は数年前に亡くなりましてね」
しかも、ご主人は遺書を残さなかった。そこで、ご主人の遺産は、金沢さんが4分の3、ご主人の兄弟が4分の1を相続することになった。
「ところが、主人は兄弟が13人もおりましてね。そのうち約半分は他界して、代襲相続により、その子どもたちが相続することになりました。主人の兄弟たちがまた子だくさんで、相続人の数は40人以上。それも全国に散り散りでした」(金沢さん)
金沢さんは、高齢ゆえ、複雑な手続きなどとてもできない。そこで、弁護士に依頼することにした。ここで、その代理人弁護士の話を聞こう。
「当初は、相続人全員にある程度のお金を渡して、亡くなったお爺ちゃんの不動産の権利を、依頼人のお婆ちゃんに書き換える計画でした」