圧倒的努力をせよ

成功している起業家とは3万人のうちの1人だ。頭角を現さなかった2万9999人は消えているから、歴史に残らない。成功した人たちだけが残っているから、成功した起業家がいっぱいいるように見える。だが、その背後は死屍累々の有り様で、成功した起業家になるのは奇跡に近いことなのである。

苦しまないところに結果はついてこない。難しい道を選ばない限り、結果なんかない。だからこそ、自分で七転八倒して、自分の勉強法を見つけることに意味がある。それは自分でつかみ取るしかない。

圧倒的努力というのは、人が寝ているときに寝ないことなのである。人が休んで寛いでいるときに、自分は仕事や勉強に取り組む。さらに言えば、人が諦めてしまうものを諦めないということだ。それをやるかやらないか。しかも決然と決意できるかどうか。仕事にしろ、勉強にしろ、結局は覚悟の問題だ。

私が幻冬舎をつくったとき、何もなかった。何もないから、何をするべきか。最初に決めたのは、年末の12月25日から1月5日まで毎日5人に手紙を書くことだった。作家の作品やミュージシャンのアルバムを全部読み、聞き込んで、自分の感想を伝える。四谷の雑居ビルに代々木の自宅から歩いて通い、昼に弁当を買う以外は、朝9時から夜中の12時まで1日5通、10日間で50人に手紙を書いた。

「うちに書いてくれ」と依頼をする手紙だ。それには、新しい発見や刺激がなければならない。私と仕事をしてくれれば、あなたにとって、もっとすごい結果が出るというふうに思わせる手紙を書かなきゃいけない。それは容易なことではない。だが書いた手紙は、ことごとく実を結んだ。それは、すぐに実を結んだものもあれば、10年後に実を結ぶものもある。詰まるところ、自分が七転八倒して悪戦苦闘したものが、実を結ばないことなんてないのだ。

幻冬舎社長 見城徹(けんじょう・とおる)
1950年、静岡県生まれ。静岡県立清水南高校卒。慶應義塾大学法学部卒業後、廣済堂出版に入社。75年、角川書店に転職。93年に退職し、幻冬舎を設立。豊富な人脈をもとにベストセラーを出し続ける。著書に『編集者という病い』(集英社文庫)など多数。
(國貞文隆=構成 市瀬真以=撮影)
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