掛け算の九九は平安時代の一般教養

教育の基礎について、俗に「読み書きそろばん」というが、江戸時代から培われたこの教育の底力が日本を支えているのだと思う。

だからこそ、読み書きそろばんをおろそかにしてはいけない。九九という暗算法は平安時代の貴族の教科書にも記されているので、当時の一般教養だったのだろう。面白いことに、九九の覚え方は今とは逆に、「9×9=81、9×8=72……」と覚えさせるものだった。とても覚えにくいような気がするが、現在覚え方が逆転しているのは、そういう理由からだろう(笑)。ただの暗記と軽く見る風潮もあるが、こういう伝統を愚直に子どもたちに伝えていくことも、日本の大人の責務であろうと考えている。

次の日本を背負うリーダーを育てよう

さらに重要なのが、これからの日本を引っ張っていく、リーダーをつくる教育だ。かつて私が仕えた小泉純一郎元総理、そして、現在の安倍晋三総理を間近に見て、指導者を後天的に育てるのは難しいのではないかと感じるようになった。

私がよく知る2人のリーダーには、読書家という共通点がある。小泉元総理は歴史小説好きで有名だったが、安倍総理は、特に近現代史に強く百科事典的な知識を持っている。それも、ただ知っているだけではなくて、ここぞというときに頭の引き出しから、必要な知識が出てくるというような特別な記憶力だ。

しかし、記憶力がいいだけでは、大将の器とはいえない。物事に動じない度胸であるとか、最後は一人で決断できる力とか、それから、どこでダッシュをかけてどこで待ちに徹するかなどを即時に判断できる勝負勘のようなものも必要だろう。

たとえて言えば、総理大臣の仕事とは、日本中の国民を従業員として抱える日本一大きな事業体の長みたいなものだ。人の能力を見分けて、適材を適所に配置する能力も絶対に必要だ。

では、こういうリーダーの素養は、どうすれば身に付けることができるのか。