※プレジデント誌の特集「トヨタvsグーグル」(2013年9月16日号)からの転載記事です。
「入社して1日目、最初に上司から、この部分に問題があるので、そこを改善してほしいといきなり言われました。そのときは、えっ、ちょっとそれは、とかなり驚きました」
こう語るのは、日本市場向けの検索機能の開発を担当しているソフトウェアエンジニアの大倉務氏。大倉氏は東京大学大学院出身の新卒採用。新卒でも日本企業のようなポテンシャル採用ではなく、即戦力採用がグーグル流だ。
グーグルの採用基準は知識、分析力、リーダーシップ、グーグルらしさ――の4つ。同社のアジアパシフィック・ピープルオペレーションヘッドのサラ・ロブ氏は前の3つをこう説明する。
「知識とは今までの経歴から判断し、物事を解析する力があるかどうかを評価基準にしたがって判断します。また、リーダーシップとは、管理する能力ではなく、与えられた責任以上の課題を目指し、それによって変革を起こすような影響力を行使し、自分の道を切り開いていくことを意味します」
最も重視しているのがグーグルらしさ。同社の人材像といってもよく、知識、経験、人脈が豊富な人、あらかじめ定まっていないキャリアパスを自ら切り開く力を持った人、同僚と協力しながらプロジェクトを遂行するうえで大事な謙虚さを示す。
採用されるにはこの4つの基準をクリアする必要があるが、審査は極めて厳格だ。「まず、リクルーターが採用候補者に関する様々なデータを用意する。採用のための会議を開催し、この人物ははたして自分たちが探している仕事にふさわしい適材の人材であるのか、つまり4つの基準をクリアしているのか客観的に判断しています」(サラ・ロブ氏)。
この仕組みは世界共通だ。製品開発本部長の徳生健太郎氏は「職位の異なる複数の人間が候補者にインタビューし、その評価をオンライン上で書き、その評価を見て会議で採用の可否を決定する。エンジニアは実際に仕事をやらせて評価しますし、プロジェクトマネージャーの場合は、過去の経験や戦略的な話をする。そのうえで同じ職種の世界中におけるグーグルの社員と比べて、ちゃんとものになるとなれば採用することになる」と語る。