うがいとマスクの予防効果は

久住さんの場合、患者の診察が終わるたびに手を洗いに行く時間は取れないので、消毒用アルコールで代用しているという。職種にもよるが、接客業なら、インフルエンザ流行シーズンにはジェルタイプやスプレータイプの消毒用アルコールで手を除菌するとよいだろう。ただ、アルコール消毒はインフルエンザウイルスには有効であるものの、ノロウイルスなどアルコールでは死なないウイルスもいる。

「眼、鼻、口を無意識のうちに手で触ることでウイルス感染が起こるので、ブルーライト対策メガネやだてメガネをするなど、眼を触らないように工夫をするのも有効です」と久住さんは話す。

インフルエンザに感染すると、発症1日前からウイルスを拡散し始める。また、インフルエンザは、感染していても症状が出ない不顕性感染の人が半分ほどいる。元気にしている人がウイルスをバラまいている可能性があるので注意して避けることは不可能だ。

では、うがいとマスクの予防効果はどうなのだろうか。

「うがいは害がないので習慣にしてもいいと思いますが、いまのところインフルエンザを予防できるという科学的な証拠はありません。通常の風邪での予防効果はあるので同様と考えてもいいのかもしれませんが。ただし、ヨウ素を含むうがい薬、のどにつけるタイプのスプレーは、妊娠中や授乳中は赤ちゃんに悪影響を及ぼす恐れがあり、有害なので使わないようにしましょう。インフルエンザにかかった人は、『咳エチケット』といってマスクをしたり、マスクを着用していないときに咳やくしゃみをするときには手で口を押さえたりして、できるだけウイルスの拡散を防ぐことが大切です。ただ、発症していない人がマスクをしても予防効果はないとみられます。それどころか、使い捨ての不織布(紙)マスクを何度も再利用するなど、誤ったマスクの使用は、かえって感染を広げ恐れがあります」と久住さんは解説する。

オーストラリアでマスクの有効性を調べた研究がある。子供がいる家庭を、子供がインフルエンザなどで発熱したときに親が医療用マスクをするグループと、フィットしないマスク使用群、未使用群の3つに分けて比較したところ、親の感染率に差がなかったというのだ。統計的に意味のある差ではないが、医療用マスクをしたグループが22.3%、未使用群が16.0%と、マスクを使わない人たちのほうがむしろ感染率が低いくらいだった。感染予防効果が出るくらい正しくマスクをつけるのはそれだけ難しいということかもしれない。

自分がインフルエンザや風邪にかかったときには、マスクを装着する前には手を洗い、ワイヤーを鼻の形に合わせ、あごを包むように下まで伸ばす。マスクでしっかり鼻を覆い、肌に密着させすき間ができないようにする。マスクを外すときには紐を持って外しすぐにゴミ箱へ捨て手を洗おう。