フェリチン不足で胃がんを発見

溝口院長がオーソモレキュラー療法に注目するきっかけとなったのは、奥さんの産後の肥立ちの悪さだったという。

「15年ほど前に妻が2度目の出産のあと、ひどい体調不良に悩まされました。精神的にも不安定になり、“産後うつ”のような状態になってしまったのです。病院に行っても原因がわからず、何か代替療法はないかと探していくなかでオーソモレキュラー療法に出合いました」

そして奥さんの栄養状態を調べると、妊娠で欠乏しやすいフェリチン(貯蔵鉄)、タンパク質、ビタミンBが著しく減少しており、それらを補充したところ症状が劇的に改善したそうだ。

「実は医師は栄養のメカニズムをあまり理解していません。それというのも日本の医学部では、栄養に関しては欠乏症などについてしか学ばないからです。オーソモレキュラー療法の効果を目の当たりにして栄養に対する考え方が一変しました」

溝口院長を頼って全国各地からくる患者は年間で約9600人に上る。30~40代の仕事を持つ女性患者が多く、男性は妻に連れられてくるケースが多い。またセレブも少なくない。

「有名な女性アーティストが通院していたことがありました。激しい体調不良で、一時は第一線からの引退も考えていたそうです。診察すると極端な菜食主義者だったので、不足していたタンパク質をサプリメントで補ったところ、体調が一気に回復して活動を再開できました」

扱っている症状では、うつや睡眠障害、花粉症などのアレルギー、不妊症などが目立つ。また、「症状を訴えても、医師から病気ではないといわれた」「薬が効かない」といった悩みを抱える患者が後を絶たない。

「男性の場合は貯蔵鉄の量を示すフェリチンの不足から、がんを早期発見することが少なくありません。鉄の不足は体のどこかで出血があって起こるもの。女性は生理による出血でフェリチンが欠乏します。一方、男性は胃潰瘍やがんの患部からの出血が疑われます。実際に仲間の医師の血液検査をしたところフェリチンが減少気味で、胃カメラの検査も受けるよう勧めたところ早期の胃がんが見つかり、感謝されたことがあります」

オーソモレキュラー療法を取り入れる医療機関も全国で急増している。現在、新宿溝口クリニックのほか、約800カ所の医療機関でオーソモレキュラー療法を受けられる。そのなかでも特に熱心なのが、次ページで紹介している医療機関である。それだけ多くの患者や医師に指示されているのだ。