立ちグルメは隠れ「出会いの場」

見渡せば、座り席はマダムだらけ。女友達らと連れだって訪れたマダムの目的は、もちろん出会いではない。「ワンランク上の素材を頬張る」に尽きるだろう。ほぼ、アンリ・ジローで乾杯だ(ダンナは仕事中)。

すぐに立ち席も埋まり、おひとり様OL、外国人サラリーマン、子連れ親子と客層は様々だ。みんなよく食べること食べること! 夜の部だと、さらににぎわい、ほろよい気分で出会いも期待できるとみた。

マダムたちがこの「立ちグルメ」に来たのは、豊富な可処分所得にものを言わせ、シャンパンとキャビアで「ストレス発散」することだろう。だが、他の世代の客の目的は違う。例えば、独身女子たち。立ちグルメのイメージを事前に聞いたところ……。

「気取らずにお腹いっぱい食べられそうで最高。出会いもありそう!」(30代女性)

どうやら食欲を満たす場としてだけではなく、出会いの場としても、期待値が上がっているようだ。

実際、ある立ちグルメでは、若いサラリーマンに声をかけられている女子2人を目撃した。狭い空間で立って食べるということは、隣の客とも袖触れ合う距離ということ。狭いがゆえに、「そのお料理は何ですか」からはじまり、「食べきれないのでどうぞ」などと、会話がうまれる確率はかなり高い。

食べているものが、ホッピーと焼き鳥ではなく、赤ワインとフォアグラですれば、気分も上がるし、相手も5割り増しのいい男に見えてくるだろう。初対面なのに、立ち席だから簡単に移動したり、LINEをシャカシャカしたりしてずいぶん楽しそうに見えた。その店は時間制限があったので、彼らは、同時に出て行った。どうやら、まだ飲み足りなくて「2軒目はご一緒に」などと男子たちは誘ったのではないか。

「出会いやすさ」以外にも、立ちスタイルには意外なメリットがある。例えば、男女が互いに座っていては顔や上半身しか見えないが、立ちグルメなら相手の全体像が見える。

「すっとした男性の立ち姿に色気や品性を感じる。逆に言うと顔がよくても、立ち姿がだらりとしていたらNG」なんていう声も聞く。

女性の食べ姿に色気を感じるという男性も多いだろう。近くで見られているのだから、出会いたい女子は、立ちグルメにおける、「美しい立ち姿、誘う食べ姿、立ちファッション」を研究したいものである。ハイヒールだと90分美しく立っていられないので、「疲れないロウヒールで参上します」というOLもいる。

結婚したいけれど、男性との出会いの場には積極的には行かないという独身女性はとても多い。もちろん男性もしかり。

今後出来れば結婚したい…………………80.4%
男性との出会いの場に積極的に行く……8.4%
(36歳~45歳までの未婚女性1000人調査 「女子と出産」より)

そういう「出会い欲」が少ない男女でも、「食欲」を掛け合わせた立ちグルメならば、出会いのチャンスは、ここそこに潜んでいるのではないか。ゲーム感覚で、さっそく今夜行ってみるのも楽しいかもしれない。

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