だが、如才ないケチ上級者は、その境目ギリギリを縫うかのような言動をするという。その一つが「ちょっと系」な人々だ。「たとえば、『ちょっと貸して』と言ってタクシー代や飲み物代などを人から借りる。また、飲食店では人が頼んだものを『1口ちょうだい』『シェアしよう』などと言って、自分はオーダーしない。さらに、男性にありがちなのが、飲み会や喫煙所などで『煙草1本ちょうだい』と言って煙草代を浮かす行為などです」
また、「すっとぼけ系」もよくあるパターンだ。
「会計のとき、『あ、財布忘れた』などと言って人に出させたっきり督促されるまで返さない。あるいは、飲み会の途中から来て、途中で帰り、飲み代を払わない。部内のメンバー全員名義の見舞金を1人だけ支払わない。あるいは支払ったときは『部員全員から』とは言わず『コレ、私からです』と言ってしまうタイプです」
また、判別しにくいケチの中には「自虐系」という一派も存在するそうだ。
「『いいな~○○さんは、お金があって』だとか、『俺、金がないんで』とか『貧乏なんで』などと同情を誘うような言葉遣いをして、結果として人にお金やものを出させる人々です」
「ちょっと系」も「すっとぼけ系」も「自虐系」も、あからさまには人の感情を逆なではしない。だが、そうした行為が重なるとジワリ、ジワリと騙されたような気になる。
「要は、ばれなければ何をやってもいいと思っているのがケチ。だからこそ、そういう人たちは、トイレットペーパーやボールペンなどの会社の備品を平気で自宅に持ち帰ったり、仲間と使ったお金のポイントを自分にだけ付けてしまったりするのです」
なぜ、そんなセコイ行為ができてしまうのかといえば、「結局、お金がすべてという価値観のため、自分のプライドなど平気で捨ててしまうから」だと丸山さんは分析する。だからだろう。「靴下に穴、ヨレヨレスーツ着用など身だしなみがだらしなくても気にせず、ランチにカップ麺を食べて周囲に臭っても、全然平気でいられるのです」。
結局、周囲への配慮があるかどうかがケチと節約家の最たる違いだ。あの軍師・黒田官兵衛は倹約家で知られたが、「金銀を用いるべきことに用いなければ、石瓦と同じである」と言い、実際、兵士を募る際などには惜しみなく金を使ったという。ケチでは軍師は務まらないということか。