週に2回以上なら治療の対象
小学校高学年になっても“おねしょ”をする子供は意外と多い。兵庫医科大学小児科学教授の服部益治先生によると、「睡眠中にお漏らしをする子供の割合は、小学校低学年で11.13%、高学年で7%前後もいる」のだとか。なかには成人後も続く場合があり、本人や親の悩みは深刻だ。
「乳幼児が睡眠中にお漏らしをするのは、腎臓で睡眠中の尿を濃くする機能や膀胱(ぼうこう)が未発達なためです。いわゆる『おねしょ』は生理現象で、何も心配いりません。しかし5歳になっても週2回以上、睡眠中にお漏らしをする場合は、『夜尿症』で治療の対象になります。最近は薬での治療が効果を上げています」
夜尿症は、しつけや心の問題として語られることが多かった。「もう大きいのにまだおねしょしているの!」と言われ、傷ついた経験がある子はたくさんいるだろう。それが、薬で治療ができるとは驚きである。
「近年、夜尿症の原因は大きく2つあることがわかってきました。1つは夜間の尿量が多すぎる『多尿型』、もう1つは膀胱が小さい『膀胱型』です。寝るときにオムツをはかせていたのが夜尿症の原因ではないかと心配するお母さんが多いですが、あまり関係ありません。後始末を負担に感じるなら、オムツをはかせたほうがいいですよ」
多尿型は、水分のとりすぎということもあるが、そうでない場合は、睡眠中に生成されるおしっこの量を減らす抗利尿ホルモンが不足していることが考えられる。このホルモンを補うデスモプレシンという薬が有効だ。膀胱型は、正確にいうと膀胱が硬くて、大きく膨らまないという症状。そのため膀胱を軟らかくする薬が処方される。
こういった治療を受けるには医師による診断が必要だが、2つの原因のうちどちらに該当するのかは、家庭でも簡単に見分けられる。
「使用前に紙オムツの重さを量ります。それを一晩はかせて、朝、おしっこを吸収した紙オムツの重さを量るのです。使用後から使用前の重さを引けば、尿量がわかります」
夜間の尿量は、1時間当たり「体重×1cc未満」という。つまり体重が35kgなら35cc。睡眠時間が8時間の場合、280ccよりも多ければ、おしっこが多すぎる、つまり多尿型の可能性があり、逆に少ない場合には、膀胱型の可能性がある。
原因がわかったら、次のような点に注意すると、家庭でも治ることがあるという。
「多尿型は、寝る2時間前から水分をとらない。夜遅くまで起きていると飲食しがちなので、早寝早起きを心がけましょう。抗利尿ホルモンは寝ている間に分泌されるので、ぐっすり寝かせることも大切です。間違っても、寝ている子供を起こしてトイレに行かせたりしてはいけません。膀胱型は、体を冷やさないこと。冷えると膀胱も硬くなりますから。ゆっくりお風呂につかり、体を温めてから就寝しましょう」
ちなみに薬による治療は、服用を開始後、短くても2週間、長い場合は3カ月くらいかかる。泊まりがけの学校行事など、心配事がある人は、早めの受診をオススメする。
■お泊り行事でおねしょが心配なら……
・ 付き添いの先生に相談をする(特別な場合なので、夜中に一度起こしてもらう、みんなよりも早く起こしてもらう、など相談)
・ 寝る前には必ず排尿するように子供に話す
・ オムツやパッドを持参させる
・ パジャマは濃い色のものを選ぶ