1976年生まれ。米タフツ大学卒業後、モルガン・スタンレー証券東京支店に入社。2004年、楽天イーグルスの創業に参画。2009年、会員制転職サイト「ビズリーチ」を開設。同社代表取締役。
いま世の中ではベンチャー企業がよく話題にされています。でも、本当のトレンドとして何が起こっているのかを、もう少し冷静になって考える必要があるのではないかなと思うんです。
僕が社会人になったのは1999年。以来、ベンチャーが注目されるのって実はこれで3度目なんですね。
まずは1999年と2000年にテックバブルがあって、2005年からライブドアショックくらいまでの2年間にも同じようにバブルがあった。で、去年の後半辺りから今がまさに3度目のバブル。こういうバブルが起こる度に「これからベンチャーの時代だ」という議論が始まり、しばらくするとバブルは泡となり消え、議論が下火になる。日経新聞のベンチャー欄がその度に表れては消えてきたように。
もちろんベンチャーに飛び込む人が増えるのは素晴らしいことだし、僕はそうした人たちが今の日本には必要だとも思っています。でも、実際には新卒の優秀な学生がベンチャーに行くかというと、まだまだそんなことはない。これはアメリカだって同じだと思いますよ。シリコンバレーだけがアメリカのすべてじゃない。僕はアメリカでいわゆるエリートと言われる大学にいましたが、周りにベンチャーに入った友人なんて一人もいませんでしたし。
じゃあ、その中で何が本質的で本当に新しいトレンドなのかというと、それはこういうことだと思うんです。
僕らの1つ上の世代の起業家に、DeNAの南場智子さん、楽天の三木谷浩史さん、サイバーエージェントの藤田晋さんなんかがいますよね。この先人たちが切り拓き、日本に敷いてくれた道というものがある。それが20代の時期を大企業でバリバリ働いて、それからベンチャーの世界に行くというキャリアのあり方だった。それぞれの会社の初期のメンバーを見れば明らかなように、DeNAはマッキンゼー3人とオラクル5人でつくった会社、楽天は興銀出身者がつくった会社だし、あの藤田さんでさえ1年間はインテリジェンスで働いていたわけで。
僕も含めて近年に起業している社長さんの経歴を見れば、昔とは違うことが一目瞭然ですよ。2度のバブルを経て、雨降って地固まるじゃないけれど、その中でベンチャーがようやくファッショナブルになってきて、僕みたいな大企業出身の人間が起業するという選択肢を選びやすくなった。ライフネット生命社長の岩瀬大輔さんだってそうだし、ちょっと調べればそういうバックグラウンドの人が明らかに増えている。
これが今のベンチャーをめぐる最も重要なトレンドなんです。もちろんまだまだ数は本当に少ないけれど、そうしたキャリアが受け入れられるようになったというのは、日本社会が多様な価値観を受け入れるようになってきたということ。昔と比べて一歩社会が成熟したのだと思うんですよ。ビズリーチには5年間で300人以上が仲間になってくれたのですが、要するに僕らがこのスピードで成長できるのも、すべてがその道をつくってくれた先輩経営者のお陰です。