世界的な金融危機に端を発した今回の不況は、2009年末か10年には回復するという見方が一般的である。オバマ新大統領の就任、BRICsへの成長期待などがその理由だ。いわば今回の不況の程度は、M(ミドル:中範囲)・N(ナロー:軽度)・M(ミディアム:中期間)であるという見方が大多数である。
しかし、私はそうは思わない。むしろW(ワイド:広範囲)・D(ディープ:重度)・L(ロング:長期間)であるという見方だ。
03年から07年にかけての日本の成長は、アメリカを中心とした外需に支えられてのものだった。円安に傾くと輸出依存に陥る日本の悪い癖が抜けていない。
日本の外需依存が変わっていないのに、その牽引力であるアメリカが、いま途轍もない金融危機に見舞われている。政府やFRBが公的資金を注入するといっても、銀行だけを助ければよかった日本の場合とは違う。被害は銀行以外の金融業(証券、保険、ファイナンス会社など)はもとより、自動車をはじめとした製造業、流通業など幅広い業種に及び、どこまで注入すればすむのか、底が見えない状況だ。
またこれまでの不況は、せいぜいG7など先進国だけの問題だった。しかし先般、G7に新興国を加えた20カ国によるG20が開催されたように、今回の不況は世界的な次元で起きている。いわば人類史上初の、世界資本主義で起こった事件といっていい。したがって少なくともあと5年から10年は楽観を許さないというのが私の見方だ。
このような見方に基づき、これからの個人の資産形成を考えてみよう。当面は波乱含みの相場が続く。投資で損をしても取り返すだけの時間がある若い世代と、残り時間の少ない60代以上とでは、スタンスを変えるべきだ。