トヨタグループ入りで変わらざるを得なかった

決算発表する吉永泰之・富士重工業社長。

それによって、富士重工は大きく変わらざるを得なかった。というのも、提携交渉でトヨタから厳しい言葉を浴びせられていたからだ。トヨタ幹部はホワイトボードに十文字のグラフを描き、横軸に「乗用か商用か」、縦軸に「実用志向か、スポーツ車のような走りを求めるか」。さらに販売台数をイメージした円を描いた。よく見るとスバル車とトヨタ車の円が微妙に重なっている。

そして、こう言い放った。

「これ以上、トヨタのゾーンの円に入ってくれば即座にたたきつぶしますから、そのつもりで」

トヨタの傘下にいながら、トヨタからいかに離れるか。富士重工の生きる道が決まった。当時、富士重工の業績は売上高1兆4465億円、営業利益420億円、当期純利益182億円と停滞が続いていた。

トヨタグループ入りしてから富士重工は大胆な事業の取捨選択を行い、経営資源を強みに集中。軽自動車生産や風力発電事業などから撤退し、自動車事業の強みに投資した。それは「安心と愉しさ」を追求した走りに関わる技術だ。その象徴的なひとつが衝突安全システム「アイサイト」である。同時に、トヨタから原価管理の手法を学び、1台あたりの収益性を大きく上げることに成功した。

そうしたことが円安効果によって一気に花を開き、今回の好業績に結びついたわけだ。「おかげで中期経営計画『Motion(モーション)-V』を2年前倒しで達成でき、今年度から新たな中期経営計画に取り組むことにしました」と吉永社長は力強く語る。