成長戦略7分野の投資妙味をチェック
2012年に引き続き、13年も「アベノミクス」が相場を牽引した。5月に大きく下落する局面があったものの、12月に入って日経平均株価は再び1万5000円台を回復した。
「市場は第一の矢(金融緩和)と第二の矢(財政政策)についてはすっかり織り込んで、今は第三の矢(成長戦略)の行方を固唾を呑んで見守っている状況です」
と話すのは、株式アナリストの鈴木一之氏。安倍晋三政権が打ち出した「日本再興戦略」には重点的に成長を目指す7テーマが掲げられているが「投資対象という観点で見れば、注目すべきものと、さほどでもないものに分かれる」という。
「例えば、民間企業活力の復活、ビジネス環境の整備、雇用・女性・人材育成は、経済効果などの観点から投資のテーマにはなりにくい。一方で、通商の拡大・グローバル化推進、農林水産業を成長産業へ、エネルギー産業の育成、健康・医療産業の拡充は、大きなビジネスになる可能性があり、関連銘柄が物色されやすいといえます」
では、後者の4分野についてはそれぞれ、どんな銘柄に注目しておけばいいのだろう。
「通商の拡大・グローバル化推進」では、巨額プロジェクトとなるインフラ輸出、中でも「日本のお家芸ともいえる鉄道関連に期待したい」と鈴木氏。安倍首相も外遊先でことあるごとにトップセールスを繰り広げている。ど真ん中の銘柄は川崎重工と、東海旅客鉄道だ。
「農林水産業を成長産業へ」とするテーマでは、真っ先に思い浮かぶのは種苗や肥料のメーカーだろう。しかし、鈴木氏は「まださして投資家に目を付けられていないところ」として地方銀行株を推す。競争原理が持ち込まれれば、資金が動く。ここに活路を見出そうとしているのが、北海道・東北・九州などの地方銀行だという。
「官民が連携して農業の6次産業化(生産から加工・販売までを手掛ける)を推進する動きがあり、地方銀行がその中核として投資銀行的な役割を担いつつあります。復興需要も鑑み、岩手銀行や山形銀行など東北拠点の地銀株をパッケージで持っておくといいのでは」「エネルギー産業の育成」はテーマが広すぎて、本命が見つかりにくい。