頼みにくいことを依頼する
たいていの仕事はチームプレーで動いている。成果をあげるには円滑なコミュニケーションが不可欠だ。企業などを対象に年間70回以上の研修・講演を行っているビジネスメール講師の平野友朗氏は、メールを書くときの前提として、そのことを忘れてはならないと釘を刺す。
「まずは『お手数ですが』の一言が大事です。メールの最初にそういったクッション言葉がないと、受け取った相手は嫌な気持ちになるものです。自覚はなくても『職務上当たり前のことを頼んでいるんだ!』という居丈高な態度に映ります」
単純な依頼のメールであっても、この種の気配りは必要だ。急ぎの仕事を頼むとか、方針転換を告げるといった「頼みにくい」ケースでは、さらに意識的な書き方をしなければならない。
LINEの森川社長は、厄介なことを部下に頼むとき、先回りしてメールの「件名」欄に次のような言葉を書き入れる。
「ごめんなさい」
「本当に申し訳ない……。怒らないでね」
社長らしからぬ弱腰な態度が微苦笑を誘い、相手はつい「しょうがない、やってやるか」と感じるという。ユーモアを交えつつ、相手を動かすテクニックである。
LINEは従業員の平均年齢が33歳と総じて若く、その多くはクリエーターだ。そのためストレートなユーモアが通じやすいという事情はある。だが、一般の企業でも、たとえば上司と部下との距離が近い少人数のチームでは十分に応用できるだろう。
そもそも森川氏は、仕事のメールを書くとき、次のような原則を守っているという。
「ストレートな表現で書く」
「結論を伝えるときは『件名』欄に結論を書く」
「場合によっては顔文字を使う」
どういうことか。