頼みにくいことを依頼する

たいていの仕事はチームプレーで動いている。成果をあげるには円滑なコミュニケーションが不可欠だ。企業などを対象に年間70回以上の研修・講演を行っているビジネスメール講師の平野友朗氏は、メールを書くときの前提として、そのことを忘れてはならないと釘を刺す。

LINE社長 森川 亮 
1967年生まれ。筑波大学(情報工学専攻)卒業後、日本テレビ入社。ソニーを経て2003年ハンゲームジャパン(現LINE)入社。07年より現職。

「まずは『お手数ですが』の一言が大事です。メールの最初にそういったクッション言葉がないと、受け取った相手は嫌な気持ちになるものです。自覚はなくても『職務上当たり前のことを頼んでいるんだ!』という居丈高な態度に映ります」

単純な依頼のメールであっても、この種の気配りは必要だ。急ぎの仕事を頼むとか、方針転換を告げるといった「頼みにくい」ケースでは、さらに意識的な書き方をしなければならない。

LINEの森川社長は、厄介なことを部下に頼むとき、先回りしてメールの「件名」欄に次のような言葉を書き入れる。

「ごめんなさい」
「本当に申し訳ない……。怒らないでね」

社長らしからぬ弱腰な態度が微苦笑を誘い、相手はつい「しょうがない、やってやるか」と感じるという。ユーモアを交えつつ、相手を動かすテクニックである。

LINEは従業員の平均年齢が33歳と総じて若く、その多くはクリエーターだ。そのためストレートなユーモアが通じやすいという事情はある。だが、一般の企業でも、たとえば上司と部下との距離が近い少人数のチームでは十分に応用できるだろう。

そもそも森川氏は、仕事のメールを書くとき、次のような原則を守っているという。

「ストレートな表現で書く」
「結論を伝えるときは『件名』欄に結論を書く」
「場合によっては顔文字を使う」

どういうことか。