源泉徴収を廃止して「青色申告」に移行せよ

税制の見直しについては私もさまざまな提言をしてきたが、結局は議論百出でアイデアコンテストになってしまい、なかなか現実の改革には結びつかない。そこで「道州制」のような新しい統治機構が誕生するときに、抜本的な改革をするべきだと思っている。

私が提案している究極の税体系は、いたってシンプルなもの。「付加価値税」と「資産税」の2本だけにするのだ。

その内容はこうだ。まず、産業基盤や雇用をつくる責任を持つ道州が、付加価値税を徴収する。一方、市町村を再編し安全・安心な生活基盤をつくる単位を30万人程度のコミュニティーとし、そちらで資産税を取る。

付加価値税は、モノやサービスを買った人(個人、法人)が支払う。日本のGDP(国内総生産)500兆円というのは、日本国民が年間トータルで生み出した付加価値が500兆円ということだから、付加価値税が5%なら25兆円、10%なら50兆円となる。国民の声を聞きながら、5~10%の間で調整すればいい。道州によって若干増減を調整してもいい。

一方の資産税は、資産を持っている個人・法人が自分の暮らしているコミュニティーに対して納付するもの。日本全体で不動産(土地)関係の資産が1500兆円、金融資産が1500兆円あるから、資産税を時価評価の1%にすれば、両者を合算して30兆円ほどの税収となる。

資産を持っている人が資産税を払うという原則に立てば、相続税という概念は要らなくなる。親から資産を受け継げば、自動的に資産税も継承・存続するからだ。

生み出された付加価値ごとに税金をかける付加価値税を導入すれば、所得税も法人税も必要なくなる。

現行の法人税は、“工夫”次第で払わずに済むようにできていて、かつて日本で一番土地を持っていた国土計画や世界中で商売している大手商社は、ほとんど法人税を払っていなかった。工夫をすれば税が大幅に軽減される、というシステムを変えなくてはならない。しかし付加価値は、売価から仕入れコストを引いた数字できっちり出せるから、付加価値税にすればイカサマのような創意工夫が入る余地はなくなる。

私の試算では、資産税と付加価値税で必要な税収はすべてカバーできる。前述したように、ざっと毎年50兆~70兆円の税収が見込めるからだ。これで複雑怪奇で不平等といわれる現行の税体系を一掃。不動産取得税だの、自動車重量税だの、ガソリン税だのといった、取りやすいところから取るやり方はおしまいとなる。また、世界的に見ても懲罰的な税率を持つ相続税、所得税、法人税などをすべて廃止できる。高速道路も国道0号線として一般道と同じように付加価値税で建設すればタダにできる。