21時30分】

運行再開を待ち駅構内で休む人々。JR東日本は早々に完全運休を発表、他社は5月雨式に間引き運転を再開した。(Gettyimages=写真)

運行再開を待ち駅構内で休む人々。JR東日本は早々に完全運休を発表、他社は5月雨式に間引き運転を再開した。(Gettyimages=写真)

自転車は手に入った。タイヤの太いクロスバイクと呼ばれるタイプである。

「最初は折りたたみ自転車にしようかと思いましたが、ドンキの店員さんが『僕も自転車が趣味ですが、川崎まで帰るならクロスバイクでないと厳しいですよ』と親身にすすめてくれたので、それに決めました。名札を見たら中国の人です。たいへん助かりました。『1万円以下の自転車が真っ先に売り切れました』ともいってましたね」

各種パーツと防寒用の毛糸の帽子、スキー手袋を含めて、このとき使ったお金は3万5000円ほど。現金も持っていたが、家にたどり着くまで何があるかわからないのでカード払いとした。

そして21時30分ごろ、西を目指して動き始めた。もっとも、渋谷を過ぎ、世田谷区内を移動するうちは「人と車が多すぎて自転車を漕げる状態になく、ほとんどはサドルにまたがりながら押して歩いた」という。

郊外へ向かううち歩行者の列はまばらになった。多摩川に近い瀬田交差点を渡るころには、自転車を走らせることができるようになっていた。川崎市内に入ると一気に加速して幹線道路を走り、道路標識や勘をたよりに娘の待つ自宅へ急いだのである。

25時00分】

道中、都内と川崎市内で2度の食事休憩をとった。食べたのは温かい蕎麦とうどんである。水分の補給も行った。

家にたどり着いたのは翌日の1時すぎ。娘はもうパジャマを着てすやすやと眠っていた。その顔を見たとたん、安堵感が押し寄せ、へなへなと床に倒れ込んだ。そのまま風呂に入らずに寝たという。