社会、組織、個人をめぐる動きをウオッチする「プレジデント総合研究所プロジェクト」。最終回は、年々その重要性を増している上司からのフィードバックについて。ポイントは「承認」にある。

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適切なフィードバックが部下の成長を促すということに異論はないはずだ。しかし、実態は異なる。「上司からフィードバックをもらえないと悩む部下が多い」と話す国際エグゼクティブコーチのヴィランティ牧野祝子さんに、部下を勇気づけ、モチベーションを上げるフィードバックを行うための研修について聞いた。

部下は上司からのフィードバックを待っている

世界10カ国で約20年間働いた経験から言える、優秀なリーダーの共通点は2つある。組織の方向性を戦略的に明示できることと、部下たちに「仕事ぶりを見ている」ことを伝える「ポジティブフィードバック」をこまめに行うことだ。ポジティブフィードバックの基礎となる「承認」には、4種類ある。

1つ目は「今回の資料はデータの見せ方がわかりやすかった」と部下が取り組んだことの結果や成果を承認する『結果承認』。2つ目が「(まだ結果が出ていないものも含めて)〇〇してくれて助かった」などと部下の言動に対する『行為承認』。3つ目が「何か手伝おうか?」や「体調が悪そうだけど大丈夫?」などと部下に気を配っていることを伝える『存在承認』。

そして最後が、部下の成長を期待して改善点を伝える『可能性承認』。ただのダメ出しにならないように、改善すべき点を「期待する」という気持ちではさみ込んで伝える。たとえば、「プレゼンの仕方は上手だったけど、資料の数値に間違いがあったのは困るから、次回は気をつけて。君ならできる」と伝えたい。これは「ネガティブフィードバック」とも呼ばれる。

私の研修は社員数万人の企業であっても、30人規模で3時間が基本。まずは受講者が嬉しかったフィードバックの経験をグループごとに話し合ってもらう。前向きな自己開示をし合えば、受講者同士が胸襟を開いて話しやすくなる。

次にポジティブフィードバックの「4つの承認」を踏まえ、部下にかける言葉を考える。最後は4人一組で、ポジティブフィードバックが得意な上司と部下、ダメ出ししかしない上司と部下を、それぞれロールプレイで体験してもらう。すると、チームとして成果が出そうなのがどちらかわかる。

約40人がフルリモートで働く企業の代表が私の研修を依頼した理由は、「成果主義が行きすぎて、殺伐とした空気を改善するため」だった。リーダー5人が事前に私の著書を読むなどしてから、研修に入った。結果、「フィードバックの仕方が具体的でまねしやすく、相手の強みを認めたうえでお互いを応援し合う空気をつくることができた」という感想をもらった。

多くの企業で、中途採用や子育て中の社員が増えるなど、働き手と働き方の多様化が進んでいる。上司と部下の関係も複雑さを増し、ますますフィードバックの役割は大きくなるだろう。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年9月13日号)の一部を再編集したものです。

(構成=荒川 龍 イラストレーション=町田七音)