昨年は景気の好転が見られたが、依然、将来への心配は尽きない。10年後も安定した暮らしができるようにいますべきことは何だろうか。

将来を不安にさせる「犯人」は誰か

一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 
楠木 建氏

これから大変な時代に入るので、自分のキャリアを設計し直さなくてはいけない――。もうしそう考えているとしたら、慌てずに冷静になってもらいたい。「これからは時代が変わる。従来のやり方は通用しない」というもの言いは、何もいまに限ったものではない。試しに「PRESIDENT」のバックナンバーをチェックしてほしい。おそらく毎年、「いまこそ激動期!」と読者を煽っているはずだ。もっと遡ってもいい。過去1800年くらいの間、「いまこそ安定していて楽な時代」という理解が世の中に定着していたときはない。大変だと感じているのは、いまのあなただけではない。生きるとは、そもそもそういうことなのだ。

環境が年々悪くなっているというのも、錯覚にすぎない。昔は仕事も安定していて暮らしやすかったという人は、『三丁目の夕日』の時代に戻るといい。当時のほうがお金はなく、生活は明らかに苦しかった。