時間軸の相対化には読書が最適だ。昔の人と直接の友達になることはできないが、読書を通じて知ることは可能だ。お勧めを一冊あげるなら、16世紀、キリスト教の布教のために来日したイエズス会を描いた『クアトロ・ラガッツィ』。この作品では、道端で人がバタバタと倒れて死んでいく戦乱の世の日本人の日常がリアルに描かれている。それと比べて、いまの日本はなんと安定していることか。
大きな時空間の中で自分という存在を位置づけてニュートラルになれたら、次はいよいよ自分の仕事のことを考えてみる。
このとき意識してほしいのは情報の遮断だ。自分の頭で考えることの重要性はみんな知っている。ところがいまは情報が多すぎて、それが容易ではない。思考は情報に注意を向けることによって始まるが、接する情報が増えると、それに与える注意の量が減ってしまう。情報と注意はトレードオフの関係にあり、情報が増えるほど思考が浅くなってしまう。
孤独こそが思考の友
これを避けるには、情報を遮断して、自分の頭だけで考えられる状況をつくりだす必要がある。具体的にやってほしいのは、フェイスブックやツイッターの“断食”。あらゆるSNSから離脱して、情報の流入を遮断してみる。併せて、PCやスマホの利用も制限してはどうだろう。仕事で使わざるをえない人がほとんどだと思うが、スマホには1日2回しか触らないとか、メールのみにしてネットにはつなげないとか、いろいろと工夫はできるはずだ。
物事を深く考えるときには、“つながって”はいけない。孤独こそが思考の友。極端な話、視覚を遮断した真っ暗な状態がいい。本当はカーテンを閉めて一人でじっくり考えられる環境が理想だが、それが難しい人はアイマスクをする。これなら通勤の電車やオフィスで、空いた時間を利用して思考に集中することができる。家の外でアイマスクをしていて他人に怪しまれても、気にすることはない。じっくり自分の頭だけで考える。これが何よりも大切なのだ。