世界のトップバッターとしてどう交渉するべきか
世界のトップバッターとして日米関税交渉が始まった。日本時間の4月17日、日本からは赤沢亮正経済再生担当大臣、相手はスコット・ベッセント財務長官となるはずだったが、会談直前にドナルド・トランプ大統領も出席することになり、会談場所も米財務省からホワイトハウスに変更された。
トランプ大統領は「対日貿易赤字が多額になっているため、これをゼロにしたい」と直球の意思表示。「日本の道路ではアメリカ車をほとんど見かけないし、農産物も買ってくれない」と不満を述べていた。農産物については事実誤認もあるようだが、トランプ大統領らしくはある。
自動車についてのトランプ大統領の主張は、日本側の安全基準や燃費テストが細かすぎて、アメリカ車が輸入されにくい「見えない壁」になっていると、「非関税障壁」への対応を求めるものだ。農畜水産物で議題に上がったのは、コメ、牛肉、豚肉、魚介類、じゃがいもなどについて。日本への輸出を拡大するため、こちらも関税以外の障壁や制約を取り除くことを求めた。
交渉はこれから複数回の会談で詳細を詰める形になる。今回の会談は両国がスタートラインを確認したという段階だが、赤沢大臣がトランプ大統領の要求に対して「まずは要求に優先順位をつけてほしい」と述べたのはいい対応だったと思う。ここで「善処していきたい」などという言葉を使ってしまうと、アメリカ側が際限なく要求をしてくる可能性もあるし、「アメリカに媚びた」と思われてもおかしくない。
トランプ大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の会談の際にこの連載で述べたが、最近の国際社会は政治でも経済でもトランプ大統領の発言に振り回されすぎている。トランプ大統領の気に入られるような方法を模索する国も多いと思うが、受け身一方ではいけない。
そういった意味では、今回「優先順位をつけてほしい」と述べたことは、「際限なく要求を呑むことはできない」という意思表示をしつつも「交渉に応じる気持ちはある」というメッセージも打ち出せる。トランプ大統領は会談後、自身のSNSで「きのうは日本の最高レベルの通商政策の責任者と、とても生産的な会談をした」という旨の投稿を行った。このことからも、日本が交渉のできる相手だということはアピールできたと思っていいだろう。
会談は和やかなムードで進み、トランプ大統領がプレゼントした帽子を赤沢大臣がかぶるシーンもあった。爆弾発言もなく安心したが、私以上にホッとしているのは赤沢大臣本人だろう。日本側は大阪・関西万博の公式キャラクター、ミャクミャクの貯金箱とぬいぐるみをプレゼントしたが、アメリカ側はかなり前衛的な造形をしたミャクミャクをどう思ったのだろうか。この点も気になるところではある。
私が愛し続けるキャデラック・エスカレード
トランプ大統領の「日本の道路ではアメリカ車をほとんど見かけない」という発言で思い出したのが、今から11年前の当時の安倍晋三首相とバラク・オバマ大統領(共に当時)の会談だ。寿司店での会食の際、オバマ大統領が「ここに来るまでの間、ゼネラル・モーターズ(GM)やフォードの車を全く見なかった。日本市場が閉鎖的だからではないか」と、現在のトランプ大統領とほぼ同じ主張をした。
オバマ大統領の主張に対して安倍首相は「アメリカ車に関税はかけていない。外を見てもらえればわかるが、BMW、メルセデス・ベンツ、アウディ、フォルクスワーゲンなど、外車はたくさん走っている」と即座に反論。アメリカ車の多くが左ハンドルのまま売られていることにも触れ、オバマ大統領の主張を鮮やかに退けた。
あれから11年が経ったが、アメリカ車の多くは左ハンドルのままだ。2023年の輸入自動車のメーカー別ランキングを見ると、1〜5位はドイツのメーカーだった。アメリカ車でトップ10に入ったのは、8位のジープ1社だけ。そのシェア率もこの年の輸入車登録数約24万台のうち、3.8%にすぎなかった。上位3社のメルセデス・ベンツ18.2%、BMW11.9%、フォルクスワーゲン11.4%と比較すると確かに少ない。それでも、ジープがなんとか10位以内に食い込んだのは、右ハンドル仕様の車が比較的多いことと無関係ではないだろう。
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