今なお日本人を魅了し続ける、司馬遼太郎。義弟が在りし日の思い出と司馬作品について語る。

当時の茶の間の会話で、私がいつも驚かされていたことがあります。私の雑駁な話が司馬遼太郎の頭脳をめぐって返ってくるのです。例えば食べ物の話はやがて貿易の話、世界の話、あるいは歴史の流れの中に入ったりしながら輻輳します。何十分か経って気づいたら、それがそのまま文明論や随筆、例えば『この国のかたち』や『街道をゆく』に掲載してもいい、きちんとまとまったものに変わっているのです。こうした経験は、取材旅行をともにした、編集者のみなさんもお持ちでした。

(構成=小澤啓司 撮影=立木義浩/平地 勲)