世界的に油も穀物も砂糖も高くなる
9月のシルバーウィーク(5連休)を直撃した台風第25号の場合、飲食、宿泊、交通など観光関連産業に打撃が及んだ。前提条件の置き方にもよるが、8月から9月に起きた一連の水害は、7~9月期の実質GDPを前期比で0.1%程度下押しするとの見方もある。
世界的にみると、さらに大きなマイナスの影響があるだろう。まず、食料価格への影響がある。8月、国際連合食糧農業機関(FAO)の食料価格指数は前年同月比3%上昇し133.3だった。約3年ぶりの水準だ。
食用油は同16%、穀物は同10%、砂糖は同3%それぞれ上昇した。異常気象、中東情勢の緊迫化やウクライナ戦争などの地政学リスク、物流混乱が同時に発生した影響は甚大だ。インドなど新興国では食料価格が上昇し始め、中央銀行は金融引き締めを重視しつつある。
電力供給が揺らいでいた最悪のタイミング
物流とエネルギーに関して、河川の内陸水運が重要な欧州では、ライン川やドナウ川の水位が低下し、はしけなど貨物船の航行に制約が出た。また、原子力発電所の冷却や水力発電に必要な水量も減少した。ウクライナ戦争でパイプライン経由のロシア産天然ガスの供給が途絶した欧州諸国にとって、今夏の酷暑はまさにエネルギー危機というべきインパクトを与えた。
さらに、熱波や水害は労働生産性の低下要因にもなる。日本でも報告されているように、酷暑など気温が上昇すると屋内外での作業時間が短くなったり、冷却のためのコストが増加したりする。今夏のフランスやイタリアの一部の地域では当局が日中の屋外作業の禁止を命じた。
今のところ、主要国が本当に異常気象の深刻さを理解し、対応策を導入しようとしているとは言いづらい。今年1月、米トランプ政権が、気候変動対策の国際枠組みであるパリ協定から正式に再離脱したことはその一例だ。
