「厳しい指導」でもついていく上司の条件
ハラスメントを恐れてフィードバックを避けることは、若手から成長の機会を奪ってしまう選択です。本当に部下の成長を願うのであれば、言うべきことは毅然と伝える厳しさも必要です。愛がないから教えない、言わないというのはマネジメントの放棄です。
ただし、一流上司の叱り方というものは、感情をぶつけません。「事実は一つ、解釈は無数」という前提に立ち、起きた「事実」と、本来あるべき「目的・目標」とのギャップを冷静にフィードバックするのです。
たとえば、部下が遅刻をした場面においては、こうフィードバックします。
「○○君、今日9時に集合だよね。今何分?」
「すいません、9時5分です」
「そうか。何かあったの?」
「いつもの電車に乗り遅れてしまって……」
「そうか、事情はわかった。でも、遅れたという事実は事実として受け止めよう。あえて聞くけれど、もし君と同じ社員ばかりだとしたら、この会社はどうなるだろう。この会社の文化はどうなるだろう? 行動の改善案を教えてもらえますか。」
部下が自分で気づく
この対話では、冒頭の一言が2つの役割を果たしています。「今日9時に集合だよね」と本来あるべき目標を先に置き、「今何分?」と現在の事実を本人の口から言ってもらいます。
こうすることで、上司が責めるまでもなく、9時という目標と9時5分という事実のギャップが、本人の中に立ち上がります。そのうえで「何かあったの?」と傾聴して事情を受け止め、「会社の文化はどうなるだろう?」という当事者への問いを投げかけ、最後に改善の約束を促しています。
なぜこの伝え方だと部下が反発せず自ら省みるのかといえば、感情的に個人の人格を責めるのではなく、目標と事実のギャップを客観的に提示し、組織への影響という視点から自己評価を促しているからです。結果、部下は自分の行動と向き合うことなります。
遅刻の場面に限らず、日常のあらゆる場面で、この人間観の違いがどのように「フレーズ」として表れるのか、対照表にまとめました。

