子供の人格を育てるのは習い事ではなく、人
親が我が子をトロフィーキッズ化させず、スポーツの場で暴走しないためにはどうすればよいのか。まず親は、「スポーツをやらせておけば、勝手に社会性や人格が育つ」という幻想を捨てる必要がある。
『スポーツペアレンティング 競技に励む子のために知っておくべきこと』(東洋館出版社、2023年)の著者で臨床心理士であるギンズバーグとデュラント、さらにはボート競技の元オリンピック選手であるバルツェルは、親による子供の人格形成について、次のように述べている。
筆者は2022年10月の記事(「スポーツは人格形成に必ず役立つ」はウソである…「アスリートほどルールを軽視する」という衝撃データ)で、スポーツには日常生活で禁止される行為が許容される独特の倫理が存在することを指摘した。
スポーツの語源はラテン語の“deportare”であり、気晴らしを意味する。日々の労働や日常の規範からの逸脱が、気晴らしになる。スポーツそのものが労働や日常の規範の連続であるならば、気晴らしにはならない。スポーツは日常の倫理との緊張関係にあり、ただスポーツを行わせるだけで、子供の社会性が育まれるわけではない。
スポーツの本質を理解する
では、子供のスポーツ環境を整え、親自身が過干渉に陥らないためにはどうすればいいのか。ギンズバーグらは、子供のスポーツ環境を整えていくための基本ステップとして、①子供の事を知る、②自分の事を知る、③子供のスポーツ環境を知る、の3つをあげている。しかし筆者は、親の暴走を食い止めるためには、さらに4つ目の「スポーツを知る」を付け加える必要があると考える。
親は、わが子が試合に出るたびに、以下の4つの視点で自問自答してほしい。
① 子供の事を知る: 子供自身が本当にスポーツを楽しんでいるか。親の顔色をうかがい、親の期待に応えるためだけにプレーしていないか。
② 自分の事を知る: 自らの欲求や葛藤を解消するために、子供を利用していないか。子供の活躍が「自分の見栄を満たすツール(トロフィー)」になっていないか。
③ 子供のスポーツ環境を知る: そのチームは「勝利」と「育成」のどちらを優先しているか。管理者や指導者の方針は、子供の発育にとって健全なものか。
④ スポーツを知る(筆者の提唱): スポーツのルールや技術だけでなく、スポーツは本来「気晴らし」であるという「スポーツの本質」を親が理解しているか。
特に重要なのが、最後の「④スポーツを知ること」である。前述したとおり、スポーツは日常の倫理と緊張関係にあり、時に大きな熱狂を生みだすことで、人々が目先の勝敗やパフォーマンスに異常なまでに執着し、「審判員への暴行」や「過酷なダメ出し」といった狂気を生むことがある。


