親からの「無条件の愛情」を感じにくい子に育つ

英スウォンジー大学准教授のPaddy McQueenが2024年に発表した「才能ある子供を持つ親のジレンマ(The parental dilemma of talented children)」という論文は、スポーツにおける早期教育の是非を扱っている。McQueenはプロとして成功するために、子供の才能を最大限に引き出そうとすることを「職業上の成功のための才能最大化(talent maximization for professional success)」、略してTMPSと呼称している。

McQueenはそのTMPSの代償として、幼少・幼年時代に得られる大切な5つの価値あるものが失われると述べている。

① 型にはまらない創造的な遊び(unstructured, imaginative play)
② 重大な責任を負っていないこと(a lack of significant responsibility)。
③ 十分な自由時間(considerable free time)。
④ 遊びと気軽さ(play and carefreeness)
⑤ 他の子供達や大人達との関係(relationships with other children and with adults)

砂場で遊ぶ子供たち
写真=iStock.com/LightFieldStudios
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既存のスポーツや遊びとは異なるルールを自由に生み出して実践するという型にはまらない創造的な遊びはこの時代にしか経験できない。学校教育では、社会で生きていく資質を身に付けさせるため、学習だけでなく遊びにおいても型を学んでいく。その過程において、少しずつ責任ある行動が求められ、自由時間や気軽さも減少していく。

TMPSは明白に、これらすべてを頻繁に蝕み、さらなる弊害として、子供が親による無条件の愛情を感じにくくなる点をあげている。親から承認を得るためには、成功しなければならないと考えるようになるという。

そのほかにも、スポーツをする仲間をライバル視するプレッシャーから、ポジティブな友人関係を築くことができなくなったり、スポーツにのめりこむあまり他の才能の開花を阻み、代替キャリアへの移行が困難になったりするという不利益が挙げられている。

プロとしてのキャリアは日米ともに短い

周知のように、プロスポーツ選手として活躍できる人間は一握りである。そして、そのキャリアも驚くほど短い。ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)選手の平均キャリア期間は約3.3年である(statista、2024)。短いキャリアのために、幼少・幼年時代に得られる大切な価値あるものを犠牲にすることになる。

この点は、日本にもあてはまる。プロ野球において、2023年シーズンで戦力外となった選手・現役引退した選手は153人であり、平均在籍年数は6.8年であった。TMPSに伴うコストや代償が極めて大きいため、親は自分達の子供をTMPSに参加させるべきではないとMcQueenは結論づけている。