周りに振りまわされるのは、自信がないから。自信がないのは、心が乱れているから。禅僧の修行は、心を整えるテクニックの宝庫だ。「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれた高僧が、あなたの日頃の迷いに対して、考え方の筋道をわかりやすく説く。
「いまの若者は……」という言い方は、いつの時代にも聞かれます。しかし、実際に若者と接すると、一般的なイメージと違う面がたくさん見えてきます。東日本大震災で大勢の若者がボランティア活動に進んで参加したことなどは、その好例でしょう。
「最近の若者は、飲みに誘っても断る」
会社でも年配社員の方はよくこう嘆きます。上司からすれば、本当に予定があるのか、ただ飲みに行くのが嫌で断られたのかはわかりません。
ところが、若手社員のほうにも言い分があります。急に「今日、飲みに行こう」と誘われても、上司から重要な話があるのか、単なる憂さ晴らしの相手をさせられるのかわかりません。もし重要な話だと知っていたら断らないでしょうし、先約があれば「明日ではどうですか?」と打診されるはずです。
つまり、飲みに誘うところからコミュニケーション不足の弊害が表れているのです。
「どうしても伝えたい話があるんだが、今夜飲みに行かないか。仕事のヒントになると思うんだ」
そのように言って誘ってみるのはどうでしょうか。若手社員も仕事に役立つ話が聞けるなら、上司や先輩と飲みに行きたいはずです。
ただし、そこで職場の上下関係を持ち出すと煙たがられます。相手のためにアドバイスしたいと本気で思うなら、会社での立場を離れて接することです。
遺産相続などの「相続」という言葉はもともと仏教用語です。師の教えを次の代に受け継いでいくという意味です。金銭やモノではなく、師からの教え(法)を伝えていったのです。
会社に置き換えれば、創業から受け継がれてきた理念、先輩たちが育んだ仕事に対する信念です。そのような思いを受け継いでいかないと、若者たちの仕事への情熱は生まれません。
若者と話すなかで、お互いの価値観がぶつかることもあるでしょう。反対の意見が出たときこそ真剣に耳を傾け、話し合う。異なる価値観を無視するのでなく、すべてを受け入れて自らの心に改めて問いかけることが大切なのです。
1953年、神奈川県生まれ。庭園デザイナーとしても活躍。代表作に水戸・祇園寺庭園、東京・カナダ大使館など。多摩美術大学教授、ブリティッシュ・コロンビア大学特別教授も務める。『禅と禅芸術としての庭』『禅シンプル発想術』など著書多数。