免疫力の土台となるミトコンドリアの役割
自然免疫と獲得免疫は、別々に働いているのではなく、連携しながら体を守っています。
ミトコンドリアは、細胞のなかでエネルギーを生み出す小器官で、「細胞の発電所」と呼ばれることも多く、生命活動に欠かせない存在です。
しかし、ミトコンドリアの役割は、単にエネルギーをつくるだけではありません。実は、自然免疫と獲得免疫のふたつの免疫を左右する司令塔でもあるのです。
ウイルスが体内に侵入すると、細胞はその異常を感知して免疫システムのスイッチを入れます。この「スイッチ」を入れるために重要なのが、元気で正常に働くミトコンドリアです。
ミトコンドリアは、ウイルスを感知した細胞内シグナルを伝える「MAVS」というタンパク質の足場として働きます。これによりI型インターフェロン(IFN-α、IFN-β)やTNF-α、IL-6などのサイトカイン産生が促され、自然免疫による抗ウイルス応答が開始されます。
また、ミトコンドリアは体温の調節にもかかわっています。
体温が少し高い状態で免疫細胞が活発に働くことが知られており、ミトコンドリアが生み出す熱は免疫力を高める重要な要素となっているのです。
さらに、ウイルスに感染した細胞を安全に処理する「アポトーシス(細胞の自滅)」も、ミトコンドリアがコントロールしています。ウイルスに感染した細胞は自ら“死”を選び、ウイルスが体内で増殖するのを止める働きがあります。この仕組みによって、ウイルスが周囲に広がるのを防ぐことができるのです。
ミトコンドリアを助ける栄養素の種類
そのうえで、獲得免疫の働きも見てみましょう。
獲得免疫においては、B細胞と呼ばれるリンパ球が、以前に感染した細菌やウイルスを認識する抗体(異物に対抗する物質)をつくり、感染の拡大を防ぎます。
具体的には、体内には、はるか昔に感染したウイルスや細菌を覚えている記憶(メモリー)B細胞が、ほんの少し保存してあります。感染を知らされると、この記憶B細胞はバージョンアップして抗体をつくれるようになるのです。
細胞の分化、つまりバージョンアップのためにはミトコンドリアが必要となります。また、抗体を多量につくり出すためには、B細胞が急速に増殖しなければなりません。そのためには、大量のエネルギーが必要になります。そのエネルギーを供給しているのもミトコンドリアなのです。
つまり、ミトコンドリアが元気でなければ、十分な抗体をつくることができません。そうなると、過去に感染した細菌やウイルスへの抵抗力が弱いままになります。
ミトコンドリアの働きは年齢とともに低下していきます。ただし、覚えておいてほしいのは、「年を取るともう手遅れ」では決してないということ。
実は、ミトコンドリアは運動によって増やすことができます。ややきついと感じる程度の早歩きや、早歩きとゆっくり歩きを繰り返すといった運動を続けることで、ミトコンドリアは活性化するのです。
さらに、ミトコンドリアの働きを助ける栄養素もあります。還元型コエンザイムQ10という補酵素やビタミンB群、アミノ酸の一種であるL-カルニチン、タウリンなどは、エネルギー産生を支える重要な成分です。


