福井氏は、もしも犯罪を犯したい誘惑に駆られたら、まず「自分は病気なのだ」という認識を持てという。そして、勇気を持って知人にカミングアウトすることが“治療”の第一歩になる。

また、心療内科を舞台にした漫画の原作者として知られる精神科医のゆうきゆう氏は、怒りをコントロールできない犯罪者の場合、自己肯定感を高めることが抑止につながると指摘する。

「暴力を振るう人は、相手を屈服させて自尊心を回復させたいという欲求を持っていますが、実は、怒りは不安や恐怖心とつながっており、暴力は内面的に傷ついたまま成長した人によく見られるものです。怒りを抑えるには、自己肯定感を高め、他人の言動によって自己の価値を左右されないようにすることが大切です」

福井氏の「自己愛の強い人は、本物の自尊心を持っていない」という言葉と重なる指摘だろう。「肩書もお金もなくても満ち足りて生きている人はいます」という福井氏の言葉が心に残った。

法政大学教授・臨床心理士 越智啓太
1965年、横浜市生まれ。警視庁科学捜査研究所研究員などを経て、2001年東京家政大学文学部助教授(犯罪心理学)、06年法政大学文学部心理学科准教授。08年より現職。著書に『Progress&Application 犯罪心理学』(サイエンス社)などがある。

性障害専門医療センター代表理事 福井裕輝
1969年生まれ。京都大学工学部、医学部を卒業後、京都大学医学部附属病院、公立小浜病院、国立精神・神経センター勤務などを経て、2012年犯罪精神医学研究機構機構長。性犯罪者の再犯防止のための治療・研究を行っている。

ゆうメンタルクリニック総院長 ゆうきゆう

東京大学医学部卒業後、精神科医。『マンガで分かる心療内科』(ヤングキングコミックス)原作者。著書に『相手の心をさりげなくつかむ!心理術:必ず好かれる!YESと言わせる!即効テク24』(王様文庫)などがある。
(和田佳久=撮影)
【関連記事】
酔った勢いでおさわりはどこまでOKか
「隠れた危険な自分」がわかる4タイプ別チェック
解明! エリートビジネスマン事件簿【1】
セクハラになる人、ならない人の違いとは
スマホをいじっていて盗撮を疑われたら