閉店間際のバーでビールを飲むのはなぜ危険か

アルコールも犯罪の引き金になるもののひとつだが、越智教授によれば閉店間際のバーに入ってビール(アルコール)を摂取することは、引き金を引きやすくする危険な行為だという。

「ビア・ゴーグルという言葉があります。ビール(アルコール)を摂取すると色眼鏡が掛かって、異性だけでなく同性まで魅力的に見えるようになってしまうことが海外の研究で明らかになっているのです。また、閉店効果といって、閉店間際のバーで出会う女性は、ナンパ目的の男性にとって特に魅力的に感じられるという研究報告もあります」

閉店間際になると、店内にいる女性の人数は少なくなる。選択肢が多ければ客観的に魅力を評価することが可能だが、選択肢が少ないと、対象を魅力的だと思おうとする心理が強く働いてしまう。

「しかも、アルコールには性行動を促進する作用がありますから、閉店間際のバーで飲むのは、男性にも女性にも危険な行為ということになりますね」

アルコールは犯罪の引き金になりやすいだけでなく、依存症を引き起こしやすい。そして犯罪もまた依存症を引き起こすのだと、NPO法人・性犯罪加害者の処遇制度を考える会代表理事で医学博士の福井裕輝氏は指摘する。

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「依存する脳」のメカニズム

「脳の側坐核は快感を受け取る部位ですが、ここが興奮すると理性を司る前頭前野に信号が伝わって側坐核の興奮を抑制します。通常はこのふたつがうまくバランスしていますが、過剰な快感を味わうと側坐核と前頭前野をつなぐ回路に異常が起こって前頭前野が障害され、側坐核の制御が弱まってしまう。これが依存症のメカニズムです」

冒頭のAさんのように、初回は出来心でやったことでも、そこから過剰な快感を得てしまうと神経回路に異常をきたし、不可逆的に犯罪のレベルがエスカレートしていってしまう。

「酒量の増加やギャンブルへの没頭は、前頭前野の制御が弱まっている証拠です。犯罪を犯す危険性が高まっているサインだと考えて間違いありません」