引き続き、10月に訪問したドイツの話である。前回(http://president.jp/articles/-/11209)は連邦政府よりも州に強力な権限がある「ドイツの統治システム」について説明したが、今回はドイツのもう1つの強さの“秘密”、職業教育について触れたい。

ドイツ発祥の職能システムといえば「マイスター制度」がよく知られている。

ドイツの製造業は、マイスターに支えられている。(AFLO=写真)

マイスターとは職人の最高位の称号(日本語で言う親方、達人、師匠など)で、ドイツではさまざまな職業にマイスター資格が存在する。手工業に関するものだけでも41の職種にマイスター資格制度があって、国家試験に合格してマイスターの資格を得なければ、独立して開業することはできないし、徒弟(職業訓練生)を指導する教育者にもなれない。たとえば、ベーカリーのマイスター資格がなければ、パン屋を開けないのだ。こうしたマイスター制度と連動したドイツ独自の職業教育が「デュアルシステム」である。

ドイツの学校教育制度は日本とは大分事情が異なる。連邦制を採用しているドイツでは、州により学校制度が異なるが、ここでは一般的なドイツの“学校制度”を紹介しよう。

小学校は「基礎学校」と呼ばれ、4年制である。この基礎学校の終了時点、日本で言えば小学4年生、10歳で将来の職業に向けた人生最初のキャリア選択が行われる。

基礎学校終了後、大学などの高等教育機関への進学を目指す場合は、「ギムナジウム」という8年制の教育課程に進学する。実はドイツにしても、前年に研修旅行で訪ねたスイスにしても、日本のように“猫も杓子も”高校の普通科から大学に進学するわけではない。