「単なる組織上の上司」と「信頼されるマネジャー」はどこがちがうのか。Googleの社員としてマネジメントに携り、それぞれのチームを率いた経験のある元マネジャー3人が解説する――。

※本稿は、中谷公三・諸橋峰雄・水野ジュンイチロ『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

「あなたは不公平だ」と部下に言われた

「あなたは不公平だと思います」

部下からそう言われたことがあります。思いがけない指摘に、私はとても驚きました。この部下いわく、いつも特定のメンバーばかりと仲良くして、ひいきしているように見える、と。

私にしてみれば、そんなつもりはまったくなく、ただ積極的に声をかけてくれるメンバーに自然と応じていただけでした。指摘してきたその人は内向的で、自分から声をかけるのが苦手なタイプだったのです。

その瞬間、私は傷つきましたし、思わず「そんなつもりはないのに」と否定したくなる気持ちでいっぱいになりました。でも、もしかしたら、自分が「正しい」と思っている態度や判断が、誰かにとっては「正しくない」と見えているのかもしれない、しばらく経ってそう思いはじめました。

そこで初めて、「正しさ」には常に両面があることに気づいたのです。自分では誠実に接しているつもりでも、そのあり方が他者を遠ざけ、傷つけることもある。私はそのとき、「正しさの罠」というものの本質に気づいたのでした。

いま振り返ると、その部下は、私とほかのメンバーとのコミュニケーションにどこか疎外感を抱いていたのでしょう。けれど、自分から同じように距離を縮めにくるのは難しかったのだと思います。おそらく「マネジャーであるあなたが、気を配って平等に接するべきではないか」と感じていたのかもしれません。

『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』
出典=『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

「なぜそう感じたのか」を相手に聞いてみる

実は、こうした「否定したくなる瞬間」こそが、マネジャーとしての本当の試されどころなのです。

マネジャーである以上、どれほど真摯にメンバーと向き合っていても、誤解されたり、理不尽な批判を受けたりすることは避けられません。思いもよらないことで陰であれこれ言われることもあるでしょう。

しかし、「そんなふうに思われるなんて心外だ」「私はマネジャーとしてやるべきことをやっているんだ」と感情的になるのではなく、「なぜそう感じたのか」を落ち着いて聞いてみる。そして、相手の気持ちに寄り添いながら、未来に向けた建設的な対話を始めることができるかどうか――それが、「単なる組織上の上司」と「信頼されるマネジャー」の違いなのです。