東日本大震災を予測していた人は皆無に近い。まさしく“一寸先は闇”だが、今回あえて専門家に日本経済の5年後(2011年当時)を予測してもらった。

5年後も今と変わらず強みを発揮する会社について、独立系リサーチ会社・TIW代表取締役の藤根靖晃氏は次のように予想する。

「多くの最終製品の生産は中国をはじめとするアジアに主役の座が移っているが、それらの基幹部品や建設機械、工作機械、プラント建設など、依然として日本企業がグローバルに優位に立っている分野は少なくない。このような分野では、5年後も日本企業がいっそう強みを発揮するだろう。コマツやファナック、IHI、三菱重工、川崎重工などがその具体例だが、私が特に注目しているのは油圧機器を手がけるナブテスコだ。帝人製機との業務提携以来、この分野では圧倒的な強さを誇っている」(藤根氏)

一方、原発事故を契機としたエネルギー政策関連ではどうか。

「日本では1960年代から原発が推進され、さらに近年は原子力技術を海外に輸出することに意欲的だったが、今後は太陽光発電や風力発電へのシフトが進むだろう。また、現状ではコスト高がネックとなっているが、燃料電池の実用化も考えられない話ではない。岡山大学と大阪市立大学が解明した光合成のメカニズムは、燃料電池への応用もありうるなど、技術の進歩で大量生産が可能になれば、大幅なコストダウンも期待される。現状、この分野では本命に位置づけられる企業が存在しないが、自動車メーカーではホンダが最も注力している」(藤根氏)

加えて、今後のエネルギー政策においては「蓄電」もキーワードの1つとなるという。

「産業用の蓄電システムは新神戸電機が強いが、家庭用ではパナソニックの積極的な取り組みが目立つ。住宅も手がけているし、LED照明への切り替えも含めてトータルで家庭の節電を提案できるのが強み」(藤根氏)