誰も見いだせていない「選挙の意義」
常設パネルなどでも情報を取っていますが、小サンプルながら見えてきた傾向として、職場や学校、地域などで政治の話をしない風潮が非常に強まっています。それもあってか、かつて公明党さんの必殺技だったフレンド票の30代以下の掘り起こしに苦労しているものと見られます。
投票先を決めていない若い人がいたとしても、その人に、会って話してみないことには票は掘り起こせませんからね。投票先をまだ決めていない若者に出会うことができず、また、彼らが政治的な話題をしたがらないという状況で票を集めることは至難なのでしょう。
そして、今回の選挙で野党が中盤まで苦戦を強いられている大きな理由は「争点が分からない」ことにあります。先日、プレジデントオンラインに高市早苗さんへの白紙委任状を求める選挙であると書かせていただきましたが、まさにその構図がそのまんま現実のものとなっています。
国民生活の根幹にある争点は「物価高」のはずですが、これは年金問題も円安も賃上げもマンション価格高騰も全部セットになった複合的な問題です。全部盛りのスペシャル二郎みたいなもので、国民有権者からすると政策のどこをどう変えれば生活が楽になるのか、非常に分かりづらいのです。
しかもマスコミがこぞってこの物価高の解決策として消費税減税を争点に掲げたものだから、話はますます分かりづらい財源の問題へと移ってしまいました。
正直、消費税を減税したところで見た目の手取りは増えますが、本当に物価が下がるかどうかは分かりません。消費税がなくなるのだから、食品にかかる消費税8%分価格が下がる、とはならないのがいまの物価高のむつかしいところで、それには当然「財源」が必要ですから、有権者が「そんなうまい話はないのではないか」と思うのも致し方ないと思うのです。
加えて自民党も維新さんも野党の皆さんも、みんな揃って消費税減税を主張するものですから、全員仲良く埋没してしまいました。それならまあなんか頑張ってる風の高市さんでいいじゃないか、と消極的支持の地滑り的発生が起きているものと見られます。
国民民主、参政乱立で自民有利に
そんな中、唯一空気を読まず消費税減税に反対と言い始めたチームみらいさんが、都知事選での石丸伸二現象や参政党ブームと同じように「他とは違う、既存政党ではない何か」という捉えられ方をして、無党派を中心に支持を集めています。もっとも、チームみらいさんは急場での擁立だったからか、経歴のおかしい候補者や選挙協力者がガッツリ紛れていて、さっさと処理しないと面倒なことになってしまいます。党組織としても未熟で、幹事業務が機能してないんじゃないかとすら感じます。
チームみらい単体は、特に比例票で国民民主党やれいわ新選組、旧立憲民主党、日本共産党、参政党各党から、都市部在住の40代以下男性の支持を奪うことで、いきなり台風の目になりました。
自民党からあまり票が流れていないのは、今回の高市早苗さんや自由民主党は実際の業績や実績を評価している有権者によって支えられているからで、既存政党が嫌で自民党には投票したくないという人は今回も帰ってきていないため、チームみらいさんには向かわない、というのが実態ではないかと考えられます。
本来なら争点になるべき医療費も含めた「年金・社会保障」問題だけでなく、前回参院選であれだけブームになった「外国人問題」もすっかり下火になっています。この問題に依存してネットで煽り選挙戦を戦ってきた参政党さんは沈没してしまいました。
また、ガソリン減税や103万・106万の壁という看板政策を高市早苗政権にあっさり丸飲みされてしまった国民民主党さんは、再び「手取りを増やす」というスローガンで挑んだものの、拠って立つ争点が消えてしまったことで埋没し、現有勢力を維持するのも難しい公算となっています。
国民民主党さんが主張していた政策を早々に高市政権に丸飲みされてしまい、特に手柄が無くなって、国民民主党さんを選ぶ理由が無くなってしまったことや、手取りを増やすというスローガンはウケたもののさすがに飽きられてしまった面はあります。保守系野党として野党第一党を目指すためには、玉木雄一郎さんの人気と手取りを増やす政策一本から、もっと幅広な政策での主張が有権者に浸透するような政党への脱皮が求められているとも言えます。
個別の選挙区を見れば、福井1区では連合さんが組織内候補を中道さんから立てようとして、国民民主党さんに対抗馬をぶつけられてブチ切れておりましたが、基本的に高市政権の選挙戦術は、過去の安倍晋三政権時に官房長官だった菅義偉さんと同様、「野党を分断する」という大原則に立ち返っています。
与党のはずの維新さんもなぜか含めて、中道さん、国民さん、参政党さん、その他泡沫政党といった各党が乱立するほど自民党が相対的に票を集め圧勝する、という構図が出来上がっているのです。
国民民主党さんや参政党さんからすれば、とにかく小選挙区で勝てなくてもきちんと候補者を多く擁立し、そこで得られる比例代表に「国民民主党」「参政党」と書いてもらって比例で議席の上積みを目指す作戦に出るわけですが、実際のところ、それは同じく小選挙区に立っているまだ勝てそうな中道改革連合さんの候補者の票を削る効果に直結します。
高市人気の高さは別として、これら小選挙区での候補者乱立が、結果として野党票・政権批判票の分断を促し、自由民主党候補を利する結果に終わってしまっているとも言えます。
そのために「野党は大同団結するべき」とは旧立憲・安住淳さんもお話されていたのですが、中道さんの結党前後の流れを見る限り、これは「俺たちが勝つために、国民民主党は独自路線をあきらめろ」と言っているに等しく、保守系野党で議席獲得を目指す国民民主党さんからすれば初めから乗りようのなかったディールであったと思います。
その点で、先にも述べた通り高齢者に支持のあった旧立憲と旧公明党両党が合併するよりは、まず何よりも若者や都市部・勤労層に人気のある国民民主党さんのほうに寄らないといけなかったのでは、と感じるところです。

