クレームは相手に信用された証

問題はお連れ様同士が一緒に食事できなかったことで、CAが気がついて2人分を同じ側から渡せば、何事もなく召し上がっていただけたでしょう。

そこでまず、「気遣いが足りずにご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございませんでした」とお詫びし、「今後こういったことのないよう、ご指摘を反省会で取り上げて検討します」とお約束しました。「改善のためのよいご意見をいただき、ありがとうございます」とお礼も申し上げました。

クレームはただ謝ればいいというものではありませんし、ご要望をすべて受け入れられるわけではありません。できることと、できないこと。お詫びすべきこと、ご理解いただくこと。一つひとつを交通整理したうえで、納得していただくしかありません。

クレームはまた、チャンスでもあります。本当に腹を立てたり、がっかりしたお客様は、「言っても無駄だ」と、黙って去っていくものです。もしも意見を言うとしたら、ネットの書き込みだったりします。

直接クレームを言ってくださるとは、「この人なら話は通じるはずだ」と信用してくださった印です。ちゃんとお詫びをし、交通整理をしながら話し合えば、またご搭乗くださいます。つまり、関係を深めるチャンスになるのです。現に食事サービスのタイミングがずれたお客様は、最終的には納得し、マイレージ会員の申し込みまでしてくださいました。

マニュアルを超えた「ANAマジック」

「クレームは嫌なものかもしれませんが、恐れることはありません」

私が後輩にこう伝えてきたのは、それがチャンスだと経験しているからです。

仕事先、家族、友人知人。日々にちょっとした行き違いはつきものです。

ごまかしたり、口先だけで謝ったり、逃げたりしない。そうすれば、相手としっかりかかわるきっかけにできるように感じます。

幼稚園くらいの小さなお客様には、退屈しのぎのおもちゃを。

若い男性のグループには、みんなで気分転換ができるトランプを。

こうしたプラスアルファのサービスは、もともと自発的にCAがやっていたものです。会社はその姿勢を評価し、マニュアルを超えたお客様へのサービスを「ANAマジック」と名づけて応援しています。

窓の外を見ながら飛行機で旅行中におもちゃの飛行機で遊んでいる少年
写真=iStock.com/FatCamera
※写真はイメージです

今では新婚旅行や記念日、誕生日のサービスができるよう、お皿にメッセージが書けるチョコレート・チューブを常備しています。ケーキとフルーツに、「HappyBirthday」のメッセージを添えた一皿は、おかげさまでご好評をいただいているようです。CA側にとってもうれしいことで、続けてほしいと思いますが、忘れてほしくないのは、それはサービスの中の「花」だということ。

私は後輩CAたちに、機会があるとこう伝えていました。

「バースデープレートはすてきです。でも、それだけに走らないようにしてくださいね」