自分で「マーケティングの拠点」をつくる

藤井太洋さん(略歴は第1回 http://president.jp/articles/-/10758 参照)。

この本を買ってよかった。読んでよかった。読書の満足感は複数の要素で構成されている。読者は単に小説を買って読むのではない。購入前の期待感、買いやすさ、読みやすさ、そして何より「話が面白いかどうか」を総合的に判断し、それが満足度となって現れる。売る側は、その欲求に応えなければならない。藤井氏はそれを「パッケージ」ということばを使って説明する。

【藤井氏】オンラインで小説を人に読ませる方法はたくさんあります。ウェブで1章ずつ公開してもいいし、アプリやPDF、メールで添付ファイルを送るという形もある。でも、その形では自分が小説を読む気になれなかった。ちょうど電子書籍という言葉がはっきり立ち上がってきていた時期でもあったので、電子書籍というパッケージにして販売しようと決め、Kindleやkoboといった電子書籍の代表的なプラットホーム以外に、直販の公式サイトを設けました。

 オリジナルドメインの『Gene Mapper』書籍専用サイト(genemapper.info)で、『Gene Mapper』とはどんな小説なのかを紹介するグラフィックやコピーを散りばめたマーケティングの拠点ですね。商品を売るために、サイトを使って情報をパッケージング化しました。

発売の2ヶ月前には公式サイト内にblogを立ち上げ、発売後2,3週目までは毎日のように更新した。ちょうど楽天の三木谷浩史氏が「koboを日本で始める」と発表し、電子書籍への関心が高まっていた時期だ。小説関連の情報あり、電子書籍やEPUB関連の情報ありと、blogのネタは尽きなかったというが、気になるのが時間の捻出方法である。

【藤井氏】blogもiPhoneで毎日書いていました。本業の方も忙しかったんですが、いくら残業をしても通勤は必ずあるので、その時間に執筆はできるんですよ。blogのPVは200~300ほど。FacebookやTwitterのフォロワーが見に来てくれている程度です。facebookの専用ページも作ったんですが、これは販促には向いてなかったですね。「いいね!」を取ればいいというものでもない(笑)。そこから最終的にはAmazonなり公式サイトに来てもらわないといけないんですが、それがわかりづらいんです。

 対して、Twitterはかなり効果的でした。読んでいただいた方のつぶやきを拾って、お礼を言うなり、RTするなりして、少なくとも自分のフォロワーには本を出したことを伝えていくことができましたから。タイムラインの寿命がおそらく2,3分しかないので、恐れずに何度でも本の話を続けられるのもいい。

 ただし、しつこくならいように、違う内容でツイートを続けることが必要ですね。「制作blog更新しました」「コラム更新しました」「◯◯さんに感想をもらいました」みたいに、その都度内容を変えて朝昼晩と2,3回伝えれば、それほど鬱陶しくはならない。自分自身が60万人のインフルエンスを持つことは難しいけれど、Twitterを使えば60万人のフォロワーを持つインフルエンサーに届けて動いてもらうことはできる。真摯にやっていれば、どこかで誰かが目をかけ、引っ張ってくれると思います。