100万円の不正経費で辞めた取締役
「取締役ですから、かなり痛恨」
11月7日、フジテレビの清水賢治社長は悔しさをにじませながらこう報道陣に語った。清水社長に痛恨と言わしめたのは、いわゆる「中居問題」から再起を図っているフジテレビにとって冷や水を浴びせる不祥事だった。
同日のフジ側の発表によると、取締役の安田美智代氏が不正な経費請求を複数回行っていたというもので、一部は安田氏が取締役に就任してからも行われていたという。不正請求は2020年からの5年で約60件に上り、約100万円分の会食費用や手土産代の申請が記載と異なっていた。
一連の問題を受けた、社内の監査で安田氏の案件が浮上。外部専門家などを交えて詳細に調査したところ、安田氏は取締役の辞任を申し出るとともに、請求分の返金の意向を示したといい、私的流用はなかったとも説明しているという。
安田氏はなぜ5年にもわたり請求を続けたのか。テレビ業界関係者が説明する。
「この業界では古くからこうした経費の申請があり、特に昭和世代のテレビマンには慣習のようになっていた」
AIなら「不自然な経費精算」を見逃さない
ドラマではないが、今の時勢に照らせば不適切にもほどがあり、そこを逸脱してしまったということだろう。こうした不正を根絶やすべくフジ側は早速、再発防止策を打ち出す。それが「AIを用いた不正請求検知システム」の導入であった。
AIを使って実際どのように不正を検知していくのか?
AI監査システムなどを開発、展開するスタートアップの代表、姥貝賢次氏が説明する。
「最近の生成AI技術を活用したチェックでは、請求内容の文脈を理解する。具体的には領収書やレシートの細目を分析して内容に不合理性がないかを検出する。例えば、会食の経費申請なのに『お子様セット』が含まれていたらおかしい。
また、取引先をWeb検索して事業の実態があるかを自動でリサーチしたり、社員のカレンダーと照合して東京で仕事をしているはずなのに大阪のレシートが上がっていたりしないかもチェックする。
なぜか休日に頻繁に領収書が発行されているといった不自然なパターンも、AIを使えば効率的かつ正確に検出できる。数字を見ていくだけでは捕捉できないものでも、文脈を理解できるAIならではのアプローチだ」


