「生活を守る味方」と考えよう

会社をたたむ法律上の制度の中で圧倒的に多く利用されているものが、破産です。前回も申し上げましたが、破産という言葉を聞くと、「絶対回避したい」と考える経営者は少なくないでしょう。平時であればそのように考えるべきです。しかし、事業が窮地に陥った際は、破産は経営者家族の生活を守ってくれる心強い味方なのだと、あえて破産に対する考え方を改めることが必要です。そうでなければ、破産する適切なタイミングを逃し、破産すらできない、という最悪の結果に陥りかねません。

生きて行くための「3つのキーワード」

破産時に生活を確保するための「3つのキーワード」

会社が破産する場合、注意すべき点はいくつかありますが、「会社関係者の生活をいかに確保するか」という視点が重要です。会社は破産によって最終的には消滅してしまいますが、従業員や経営者という生身の人間には生活があります。また、会社の取引先に過度の迷惑をかけない、ということも考える必要があるでしょう。上手な会社のたたみ方の極意は、破産する会社の関係者をいかに守るか、という点にあるといっても過言ではありません。

そこで、生活を確保するための「3つのキーワード」をご紹介します。

(1)従業員の未払賃金立替制度

これまで頑張って会社を支えてくれた従業員に対する未払賃金等を、会社以外の第三者が立て替えてくれる重要な制度です。

(2)自由財産制度

破産後の会社経営者の生活資金を確保するための制度です。これを上手に利用できないと、破産直後の経営者の生活が非常に苦しくなる場合があります。

(3)否認対象行為

破産をしようとする会社や人が法律上禁止されている行為のこと。たとえば、会社が支払不能になった後、特定の債権者だけに債務の弁済をしてしまうなどの行為がこれに含まれます。これを知らないと、債権者に二重の迷惑をかけてしまうことになりかねません。

まず今回は、未払賃金立替制度について説明します。