今から13年前の2012年に、超党派の「尊厳死法制化を考える議員連盟」が、患者の延命治療を中止しても医師の責任を問わないようにする「尊厳死法案~終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案」を発表した。

ところがこの法案は障害者団体などから強い反対を受けたため、国会に提出されず、議論もほとんど行われないまま現在に至っている。

法案の推進者は、「私たちは“弱者や障害者の命をとろう”というのではなく、自らの意思で死を迎えたい人たちの選択肢を認めてほしいと言っているだけです」と丁寧に説明したが、障害者団体の代表は「そうは言われますけど、そういう法律ができると、私たちに無言の圧力がかかってくるんです」と納得してもらえなかったという。

シニア女性の腕あたりで支え、一緒に公園を歩いている若い女性
写真=iStock.com/StudioYummy
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議論を避けたままでいいのか

日本では「忖度文化」が根強いため、安楽死が法制化されると、家族や社会に迷惑をかけたくないという思いから、本人の意思に反して安楽死が選択されてしまうのはないかという懸念があるようだ。

しかしながら、もし日本で安楽死が法制化されたら、老老介護などで追い詰められている高齢者世帯の状況を改善する一助になる可能性はあると思う。「耐え難い終わることのない苦しみ」や認知症などを抱える高齢患者の中には死ぬ権利について自分で考え、家族とも話し合いたいという人がいるかもしれない。

ヨーロッパで安楽死を受ける人の大多数は高齢者であり、オランダではその85%を65歳以上(2021年)が占め、ベルギーでは72.6%を70歳以上(2024年)が占めている。ヨーロッパで安楽死の合法化が進んでいる背景には、個人の自己決定権を尊重する人々の意識の変化や高齢化の進展による終末期医療への関心の高まりなどがあると指摘されているのはそのためである。

安楽死の合法化は65歳以上の高齢者層に最も大きな影響を与える可能性があり、世界一の高齢化率を誇る日本こそ、安楽死や尊厳死の法制化に向けた議論を積極的に進めるべきではないだろうか。

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