「自分は今日の正午に死ぬだろう」

その日、重三郎は「自分は今日の正午に死ぬだろう」と予言したとされます。それだけ気力・体力含めて衰えていたのでしょう。自らの死期を悟った重三郎は、「家事」について「処置」した後に妻と別れの言葉を交わします。ちなみに「べらぼう」では、重三郎の妻は「てい」と言い、女優の橋本愛さんが演じています。

妻と別れの言葉を交わした重三郎でしたが、予告した正午になっても息絶えませんでした。その時、重三郎は「命の幕引きを告げる拍子木がまだ鳴らないな」と述べ、笑ったとされます。ところがこの言葉の後、重三郎が口を開くことはありませんでした。同日夕刻、重三郎はこの世を去ります。48歳でした。

重三郎は生前「志気英邁しきえいまい」で細かいことにこだわらず、人と接する時は「信」をもって接したとされます。そうした性格が一癖も二癖もある多くの作家を惹きつけて、共に仕事をしようという気にさせたのでしょう。重三郎の世話になったこともある滝沢馬琴は気難しい性格と評されていますが、重三郎の死を悼み「夏菊にむなしき枕見る日かな」との歌を残しています。