ハーンは新聞社をクビになり転職

しかし、ハーンがどれほどセンセイショナルな事件を扱ったとしても、または、それがセンセイショナルであればあるほど、書き手に要求されるのは、冷静な観察眼や、理性的な文章、教養の蓄積でした。その点において、ハーンとマティのギャップはあまりにも大きかったといえます。

さらに当時のアメリカには、黒人女性との結婚を容認する空気は皆無でした。二人は住むアパートを探すのさえ苦労しました。職場でも風当たりは強く、ハーンはせっかく得た新聞社の正社員の地位も失って、以前より安い給料でライバル紙に移籍します。ハーンとマティの仲が決定的な破局を迎えるのは1877年の夏頃だと推測できます。なぜなら、この年の10月にハーンはシンシナティを去って、ニューオーリンズへ向かうからです。