「一家心中しよう」とまで話し合った
妻(久美沙織・作家)は、45歳で初めて出産しました。結婚して14年目。なかなか授からず、妻が40代に近づくころになって、真剣に子づくりを考えはじめました。
40代初産となると、様々なリスクを考えなければなりません。障害を持った子が生まれる確率は高く、妊娠中毒症が重くなりがち、異常妊娠の発生比率も高いといわれます。子供が成人するころには親は還暦、というのもリスクかもしれません。
産むか否かの判断は、もちろん夫婦の自由です。けれども、高齢出産はリスクが大きいからヤメ、というのはいささか安直だと思います。リスクの大小を客観的に理解することが大切ではないでしょうか。
たとえばダウン症などの染色体異常を調べる羊水検査です。45歳以上の出産ではダウン症の子供が生まれる確率は200例に1人、平均の5倍にとされています。悩みましたが、ふたりで出した答えは「検査はしない」。発症率は高い、しかしそれは特定のリスクについての数字であって、妊娠出産にともなうリスクのすべてが5倍になるわけではないのだから、過度に気にすまいと。また、異常ならば産まない、という選択をするつもりがそもそもないのなら、検査の意味はありません。
私たちは「中絶はしない、私たちに育てきれないと判断したら、一家心中しよう」とまで話し合いました。
何をバカな、と言われるかもしれません。けれど、極論も含め、互いの思いを語り合うことで、「覚悟」ができていったように思います。
他方、1歳以上の子供の死因第1位は事故死です。親の性格にもよりますが、総じて言えば、若いときより中年になってからのほうが、日常に隠れた危険に気づきやすくなり、予防を励行し続けやすくなるように思います。叱るより褒めよ、手を上げてはいけないとわかっていても、若いと我慢が難しいときもある。けれど部下を持つ世代であれば、日々実践できる確率は高くなります。夜遊びももう十分やったはずで、外で飲む代わりにプリキュア映画を子供と一緒に見ながらの家飲みでも、苦になりませんよね?
トータルで考えれば、高齢出産リスクは、ある程度は相殺されるものと思います。