小早川秀秋になってはいけない

日本が相対的に弱く見えるのは、周辺に軍事力世界ランキング1位のアメリカ、2位のロシア、3位の中国、5位の韓国と上位国が集まっているからです。アメリカは国土の距離は離れていますが、在日米軍が駐留しています。「強い弱い」というのは相対的なものです。たとえるなら、スポーツの県大会で優勝した人が、全国大会に行くと他の県の優勝者のレベルに及ばず、1回戦で敗退してしまう……みたいな感じでしょうか。

オオカミ少佐『元海上自衛隊幹部が教える 国を守る地政学入門』(河出書房新社)
オオカミ少佐『元海上自衛隊幹部が教える 国を守る地政学入門』(河出書房新社)

どちらに付いても勝敗が変わらないのなら、勝ち馬に乗るのがよいでしょうが、日本は「どっちが勝ったほうが、よりマシか」ということを選べる国です。地理的条件から、どちらの陣営に付くかを選択できない国が多いことを考えれば、日本は相当に恵まれています。

そして、これを選べるのは「今」だけです。いざ、台湾有事が起きてから米軍の基地使用を認めるかどうかでもめたりすれば、遅れた分だけ中国にとって有利に働き、アメリカに不信を抱かせます。真偽不明ですが、天下分け目の関ヶ原の戦いでは裏切りを約束していた小早川秀秋がいつまでたっても動かないことに徳川家康が激怒したという逸話もあります。旗幟は早めに鮮明にしておいたほうがよいという教訓です。

事が起きてからでは遅いのです。どちらを選んでも無傷ではいられませんが、選ばない、あるいは選ぶのが遅れると、選択肢がなくなったり、より酷いことになりますからね。

小早川秀秋の肖像画
写真=Wikimedia Commons
小早川秀秋の肖像画(高台寺所蔵、作者不詳/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons
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