逆風の中でのスタート

しかし「あんぱん」は、順風満帆の中で始まったわけではない。前作「おむすび」が、多くの人々の朝ドラ視聴習慣を失わせていたからである。

【図表】朝ドラ直近5作の個人視聴率推移
筆者作成
「TVAL」から作成

直近5作を振り返ると、リアルタイム視聴が後退するテレビ放送の中で朝ドラマはさまざまな実験をしてきた。主人公を男性にした23年前期「らんまん」(神木隆之介・主演)、戦前から戦後の日本のポップス界を舞台にした同年後期「ブギウギ」(趣里・主演)、女性差別の克服というハードなテーマに挑んだ24年前期「虎に翼」(伊藤沙莉・主演)などだ。そして一定の数字と評判を残した作品は、次の作品に好調なスタートを切らせてきた。テレビのリアルタイム視聴が苦戦する中、近年の朝ドラは健闘していたのである。