支援内容に差が出るのは、各自治体の財政状態と方針によるところが大きい。たとえば葛飾区では、区長が子育て家庭への支援を基本理念として掲げ、私立保育園や幼稚園に助成を行うなど子育てをしやすい環境をつくることを重視している。その成果は、保育園の待機児童が23区の中ではかなり少ないことからも窺える。常に3桁の待機児童数がある区が多いにもかかわらず、葛飾区は2008年は48人、不況である2009年でも62人だという。

自治体の育児補助や子育てにやさしい環境づくりについて、どこに着目すべきかは家庭によって異なる。

まず賃貸住まいで、将来住む場所が変わる可能性がある場合だが、これは専業主婦か否かで違ってくる。専業主婦であれば子供を保育園に入れる必要性が低いため、江戸川区で行われているような私立幼稚園に関する補助金制度がある自治体のほうが魅力があるだろう。一方、共働きの家庭であれば、葛飾区のように待機児童数が少ない自治体のほうがいいわけだ。

家を持って、そこで長期にわたって暮らす場合には、その地域で子供がある程度の年齢まで育つことになるため、育児サポートよりも、安心して通えるような公立小中学校があることが重要だ。仮にいい公立の学校がなくて私立中学校に行かざるをえない状況になった場合、公立に通わせた場合と比べて年間100万円単位の差が出るため、育児補助どころの騒ぎではなくなる。

現実的には、育児補助の面だけでなく、ライフプランを考えてどこに住むかを判断することになる。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=相馬留美)