アメリカは居心地が悪い

仙台市内の西公園にて。2013年1月撮影。震災の跡が残ったままだ。

宮城県立仙台第一高校2年生の鈴木丈治さん。お父さんはイングランド出身、お母さんは宮城県出身。鈴木さん自身はイングランド生まれ。 鈴木さん、「できれば東北にいたい」という意識はありますか。

「まったく感じていないです。親は『どこでもいいよ』と言ってますし、日本にも縛られてないかんじです」

進路について学校の先生に相談することはありますか。

「親にしか訊かないです。先生はたぶん日本の大学に入れることしかやったことないので」

今まで会った大人で、すごいと思う人はいますか。

「会ってる大人の数も少ないと思うんですけど、小学校から考えても『この人、すごいな』って思う先生がほとんどいない」

大人のどういうところに期待するんですか。

「ハードル高いと思いますけど、 人間性からなんかすべて。うちのお父さんは、仕事と家庭のバランスを頑張って取っている。なんか典型的な日本人のお父さんって、仕事をやって家庭はどうでもいいっていうパターンが多いと思うんですけど、うちのお父さんはその超反対で。家庭第一優先事項で。小さいころは必ず土日両方ともどこかに連れて行ってくれたり。海に行ったり、虫取りしたりとか、なんか素朴なことで楽しませてくれた」

取材の終わり際、鈴木さんは堰を切ったようにこう話している。

「あ、ちょっといいかな、さっきの大人の話の捕捉で。大人のひとに、子どもだからっていう目で見てほしくないっていうか。特に日本人の大人のひと、大人と話すときと子どもと話すときで、明らかに態度の差があって。アメリカ行ったとき、最初のウェルカムセレモニーかなんかでしゃべったとき、俺、一応しゃべる側だったから、大人と同等に扱ってくれて、同じように水を配ってくれて。きちんと自分に興味を持って話を聴いてくれて。日本だと、子どもだったら扱いがぜったい違う。日本、かなり縦社会だと思うんで、単に『あなたのほうが年齢が上ですから、じゃあ、私の上司ですね』みたいな。シリコンバレーでいろんなものが開発されているのも、すごい人を集めて実力主義ですごいものをつくっているからで、日本ももっと実力を重視したほうが将来のためにもなるし。俺が実力重視が好きだから、それは単なる俺の個人的な意見なんだけど」

鈴木さんのアイデンティティ、日本とイギリス、どちらになりますか。

「特にないです。日本でもイギリスでも居心地いいんで。でも、アメリカはたぶん居心地悪いです。人が理解できない」

それは「TOMODACHI~」の3週間で再確認したということですか。

「なんていうのかな、反応が理解できない。 俺が発音すると、イギリスのアクセントにみんなすごい無駄に反応するし 。服装も理解できない面がかなりあるけど、たとえば『集合時刻が3時に変わったよ』って言ったら、『OK』じゃなくて『cool』。何が『cool』なのかまったく理解できない(笑)。アメリカ人はいつもポジティブに持って行こうとする。あと、なんか歴史がないせいか、伝統があんまりない。ホームステイ先のファミリーが、ナイフとフォークがあるのにフォークだけ使って食べるんですよ。俺がナイフとフォークを使ったら『あなた、左利きなんですか?』って聞かれて(笑)。あと、イギリスだと食べながら歩くと絶対怒られるんですけど、それもアメリカはぜんぜんないし。やっぱり文化の違いを感じました」

一緒に行った299人の友だちの合州国への反応、鈴木さんにはどう見えましたか。意地悪な言い方をすると「お前ら、ここで驚いちゃうのかよ」と思ったりはしましたか。

「……ていうのは、ありましたね。もうちょっと別のいろんな国を歩いてみれば、そこまで驚かないと思う。『すごい』って思うんじゃなくて、逆に『ちょっとどうかな?』って思うんじゃないかな。ちょっとひどい言い方をすると、経験が薄いなって、正直思いました」

じっさい、彼の海外経験は日本の平均的な高校2年生と比べれば、圧倒的に豊富だ(年明けに彼の Facebook ページを見ると、中東とローマを旅していた)。だからこそ、取材時に聞いた、彼が一度した訪れていない地の話は印象に残った。