日本でも390万人のユーザーが行う創造・改良の活動

本連載の1回目(http://president.jp/articles/-/1954)で紹介したように、消費者イノベーションの実態調査がここ数年で本格化している。消費者が自分のニーズを満たすために製品創造や改良を行っていることはイノベーション研究者の間で広く知られている。

ただし紹介されるのはアウトドア製品、玩具、マウンテンバイク、スポーツ用品とごく一部だった。消費者が製品革新を行っているといっても特定の分野だけではないか。ユーザー・イノベーションに批判的な人たちはそうした疑問を投げかけてきた。

そこでユーザー・イノベーション研究の先駆者であるMITのフォン・ヒッペルが中心となり国単位で消費者イノベーションの実態を明らかにするプロジェクトが始まった。

調査が最初に行われたのは英国。最初の結果が発表されたのは昨年(2010年)だった。その後、筆者が加わり日本と米国について同様の調査を行い、消費者イノベーションに関する世界初の国際比較調査へと発展した。

どの程度の消費者がメーカーの後追いでない革新的製品を生み出しているか。それは幅広い製品分野で見られるか。結果が出るまで実は確信が持てなかった。

しかし、結果は我々の不安を吹き飛ばしてくれた。多くの消費者が多様な分野で製品イノベーションを行っていたのである。自信を深めた我々は調査結果を論文にして、世界中の経営者を読者とするMIT Sloan Management Reviewに投稿した。

雑誌の編集責任者は消費者イノベーターの実態を明らかにし、消費者を中心とする新しいイノベーション・パラダイムを提唱していると高く評価してくれた。その結果、論文は採択され、しかもカバーストーリー(目玉論文)として同雑誌の表紙を飾ることになった。

以下では論文の中身を紹介することにしよう。調査は英国、米国、日本に住む18歳以上の消費者を対象に行った。回答者数は英国が1173名、米国が1992名、日本が2000名だった。調査では、「過去3年間に(1)仕事以外の時間に(2)同等のものが市場にないため、製品創造か製品改良を行ったことがあるか」を質問した。