明らかに分の悪い裁判で、それでも無罪を主張する人はどんな言い訳をするのか。裁判傍聴歴19年で、その体験を『なぜ元公務員はいっぺんにおにぎり35個を万引きしたのか』(プレジデント社)にまとめた北尾トロさんは、「無罪を堂々と主張する人たちのなかには、ずっこけてしまうような『珍主張』もあった」という。今回はそのうち5つの事例を紹介しよう——。

勝ち目ゼロなのに無罪を堂々と主張する人の珍語録5

北尾トロ『なぜ元公務員はいっぺんにおにぎり35個を万引きしたのか』(プレジデント社)にも、勝ち目がない裁判にもかかわらず、裁判長や検察官に対して無罪を堂々と訴えるひと癖もふた癖もある被告人がたくさん登場する。

被告人の多くは精神的に追い詰められた状態で、「有罪か無罪か」「(有罪の場合は)何年の刑期にすべきか」を決める裁判に臨む。日本の裁判で無罪判決が下される確率はかぎりなくゼロに近いので、身に覚えのある被告人が現実的に狙えるとしたら執行猶予付き判決となる。

塀の中に入るのか、それとも社会の中で更生する機会を与えられるのか。瀬戸際の争いが繰り広げられるだけに、被告人が緊張でガチガチになるのはむしろ普通だ。

しかし、なかには肝の据わった被告人もいる。客観的に見て勝ち目はないと思えるのに、自身の正当性を堂々と主張する人たちだ。自信満々の根拠は何なのか。法廷で出会った珍主張を紹介しよう。