言い逃れできる余地をつくっておく

職場で仕事のできない部下や上司にガツンと言ってやりたいが、パワハラやセクハラで後で相手から訴えられるリスクがある。「職場でのトラブルの原因は今も昔も人間関係が大半」。そう語るのは城南中央法律事務所の野澤隆弁護士。「ストレスがたまると、つい暴言を吐いてしまうときがあるかもしれません」。

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野澤弁護士によると法的に問題となる暴言は「侮辱」と「名誉毀損」。発言内容がいずれかに該当すれば、訴えられたときに不利な立場になる。

「『侮辱』とは、クライアントに対し思い切った価格交渉ができない部下を同僚が見ている前で『おまえ、ケツの穴がちいせえな!』などと言ってしまったときです。相手の尊厳を無視し、貶めている発言ですからNG。『名誉毀損』は事実であっても社会的評価を広く低下させる行為が該当します。上司が『簡単な交渉すら仕上げられないので何年も給料が上がらず、サラ金にも手を出しパチンコばかりしている独身ライフ』などと社内のかなりの人が見ているメールなどで部下の評価をしてしまった場合です。この場合、仮に事実であったとしても、およそ業務と関係ない『サラ金』『パチンコ』などといった要素が社会的評価を著しく低下させる書き込みと判断される可能性があります」

こうしたセリフを吐かずに、うまく相手にガツンと言える方法はあるのだろうか。

「相手への不満は『たとえ話』を活用しましょう。『最近の課長ってトランプ大統領っぽいよね』と言えば、仮に強引に物事を進める課長だとしても『侮辱』『名誉毀損』には当たりません。毀誉褒貶がある大統領ですが、まだ歴史的評価が下されておらず、決して『トランプ大統領っぽい=強引に物事を決める悪人』にはなっていません。また、たとえ話は具体的なことは特定していないため、相手から『不快な思いをした』と追及されても、発言内容を修正できる余地があります」