久々に歯科医に行くと、新しく導入された器具の性能に驚かされることがある。テクノロジーの発達とともにどんどん進化を遂げていく歯科治療。最先端はどうなっているのか。その道の「名医」たちに解説してもらった。

テクノロジーの発展で、治療はここまで進化

歯科医療が高齢化の進展やデジタル化の影響を受けて大きく変わろうとしている。これからの歯の治療はどうなるのか。歯科医療メディアを運営する「ホワイトクロス」代表・赤司征大氏に、現在の全体像を聞いた。

歯科治療で用いられるマイクロスコープ。医療の世界では1950年代、耳鼻科を皮切りに導入された。日本の歯科でも徐々に普及しつつある。(株式会社ヨシダ=写真提供)

まず、ニーズの変化だ。かつては虫歯を削って穴を詰めるなどの治療が中心だった。それが学校での歯磨き指導や、80歳で自分の歯を20本以上残すのが目標の「8020運動」、予防歯科の浸透などの効果があり、近年、子どもを中心に虫歯は急減している。

「今後、虫歯の減少が見込まれる一方で、すでに急増しているのが歯周病。その予防・治療のウエートが高まっています。また近年になって、その歯周病が失明やがん、認知症など、さまざまな病気や症状と関係していると論じる研究論文が、世界中で同時多発的に発表されています。口腔と全身の健康との関わりが注目されています」

そして治療における最近の傾向が、「エビデンス重視」だ。歯科治療には、経験に基づく治療と、エビデンスに基づく治療の2つがあるという。

「日本の歯科治療は、匠の技から発達した流れがあり、半世紀ほど前から『名人』の下で若手が学ぶようになり、その流れは現代でも引き継がれています。一方で近年、欧米などで学んで帰る歯科医が増え、論文に基づく科学的見地に目が向くようになりました。どちらも大事な要素ですが、最近は経験にエビデンスを織り込んで治療を行う歯科医が徐々に増えています」(赤司氏)

さまざまな潮流がある歯科治療。その中で特に目を離せないのが、テクノロジーの発展である。赤司氏によれば、「歯科治療は使う器具や材料の発達とともに進化する世界」であり、近年、機器のデジタル化が進んでいる。